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言葉の壁をなくす「ポケトーク」 日本発の世界的サービスを目指しキャリア採用を強化

「言葉の壁をなくす」をコンセプトに、お互いに相手の言葉を話せない人同士が自国語のまま対話できるAI通訳機「ポケトーク」。このプロダクトで通訳機市場の圧倒的なシェアを有しているのが、ポケトーク株式会社です。

現在は、AI通訳アプリ、ライブ通訳(同時通訳)、ムービー翻訳などもリリースし、事業領域を拡大していますが、いまどのような人材を求めているのか。HRリーダーの佐々木貴良さんにお話を聞きました。(聞き手・文:水野香央里)

コロナ禍で「海外旅行以外の市場」が見つかった

ポケトークHRリーダーの佐々木貴良さん

ポケトークHRリーダーの佐々木貴良さん

――ポケトークはコロナ禍の2022年にソースネクスト(東証プライム市場)から分社化しましたが、どのような経緯だったのでしょうか。

2017年に最初のモデルを発売以来、「ポケトーク」は順調に売り上げを伸ばし、ソースネクストの事業の中でもかなりの売上を持っていました。しかしコロナ禍の影響で、会社全体としては黒字を確保したものの、ポケトーク事業は主力の海外旅行市場やインバウンド需要が一気に縮小してしまいます。

AI通訳事業から撤退する会社もある中で、当時ソースネクストの会長を務めていた創業者の松田(憲幸氏)は、「いまこそ分社化の絶好のタイミングだ」と判断し、新しい会社として独立して自ら社長に就任しました。そして事業にブレーキをかけることなく、攻めの姿勢で事業展開を続け、2025年の上場に向けて大手企業との提携などを行っています。

ポケトーク事業に携わっていた社員も、コロナ禍が終われば需要は確実に戻るし、そのための準備をしなければ、という共通認識を持っていました。加えて、コロナ禍ではそれまで認識していなかった需要の開拓をすることもできました。

――コロナ禍で新しい市場が見つかったということですか。

最も大きかったのは、米国市場です。2020年1月に横浜港のダイヤモンド・プリンセス号でコロナの大規模感染があった際に、厚生労働省の要請で「ポケトーク」を無償提供しました。さまざまな国の患者さんと医療従事者がコミュニケーションを取るために非常に役に立ったということです。

この話をうけて、米国の医療機関からの同様の依頼に応えたところ、追加購入の発注が続々と届きました。実は多人種・多民族の米国では、およそ2割の人が英語を話せないという状況があります。高価なスマートフォンを使わない専用機であったことや、ボタンひとつで操作可能であったことも医療機関のニーズに合っていたようです。

――事業を諦めなかったからこそ、新しいニーズにも対応できたと。

現在、海外事業は国内事業に匹敵するレベルに成長しており、米国では学校や倉庫など英語を母国語としない人が多くいるところで「ポケトーク」が使われています。

モニター上に映画のような字幕を出せる「ポケトーク ライブ通訳」も、コロナ禍でオンラインミーティングが普及した影響で生まれた新しいサービスです。日本でも、量販店を中心とした専用機の販売に加え、法人向けのソフトウェアプロダクトの導入も増えています。パンデミックを経て様々な需要が見えたことで、「ポケトーク」シリーズが大きく広がるきっかけになりました。

法人向けの「バリューセリング」ができる人が欲しい

――現在はどのような課題に取り組んでいますか。

現在は、量販店を中心とした専用機のハードウェア販売から、SaaS型のサブスクリプションビジネスに事業を拡大する大きな転換期に当たっています。商流もtoC(個人消費者)に加えてtoB(法人)も強化するフェーズに入っており、さらに国内のみだった事業が海外を含む市場に変わっています。

これら全てをきちんと行なえる組織を作っていく必要があり、そのためにもまだまだ仲間が必要という意味では、人材採用が非常に重要と考えています。コーポレートを含むあらゆるポジションで人材を求めていますが、特に重視しているのはプロダクトサイドと、ビジネスサイドの人材採用です。

ポケトークのウェブサイトより

ポケトークのウェブサイトより

――具体的にどのような人材の採用に注力しているのでしょうか。

プロダクトサイドでは、開発責任者やプロダクトマネジャー、テクニカルサポートなどのポジションで人材を募集しています。「ポケトーク」は製造工程をパートナー企業に委託していますので、プロジェクトマネジメント力やコミュニケーション能力のある人材を求めています。

ビジネスサイドでは、エンタープライズセールスの採用に力を入れています。現在の主なお客様はインバウンドに対応するホテルや観光業などですが、顕在化したニーズにマッチさせるだけでなく、お客様に話を聞いた上で課題や潜在的なニーズを掘り起こし、解決に向けた新たなソリューションを提案するバリューセリングが求められます。

したがって、ある程度大きな案件やお客様に対し、商談化からクロージング、その後のカスタマーサクセスといったところまでのリレーション構築を行ってきた方を求めています。無形商材、特にSaaS型のプロダクトやソリューションを提供する仕事に従事してきた方は向いているのではないでしょうか。

――担当市場は日本国内に限定されるのでしょうか。

米国市場のマーケティングは基本的に米国子会社が対応しており、日本のセールスはすでに多くの引き合いをいただいている日本国内のお客さまへの対応が中心になります。まずは国内シェアを獲得するとともに、新たなソリューションを開拓することが目標です。

一方、そのような活動の延長線上で海外市場に染み出していくこともありえますし、そのような機会を自分で作ることを阻害する風土はありません。国内に軸足を置きながら、グローバルにも自分の活躍の場を広げたい志向を持っている方には、当社は非常にマッチすると思います。

求める人物像は「明るくポジティブな人」

――御社の企業文化、カルチャーを言い表すとしたら、どういう言葉になるでしょうか。

「完全実力主義」といえるかと思います。年齢や学歴、性別といった本質的ではない要素で評価が分かれることはないという意味で、自分自身の実力をしっかり試して勝負したい、伸ばしていきたいという方には非常に合うと思います。

ただし「実力主義」というと一般的には、他人を蹴散らして自分の力を示し、のし上がっていくようなイメージがあるかもしれませんが、当社の文化は決してそのようなものではありません。基本的にチームで動きますし、最終的に会社全体でお客様に対して最良のソリューションを提供できるよう全員で取り組みます。

心理的安全性も確保されており、自由な発言ができる風通しのよい職場であると自認しています。大企業で何百億円の実績を作ってきた経験や、それぞれのドメインでトップセールスをして来たような人がたくさんいますが、みんな相手にリスペクトを持って接することができる人たちばかりです。

若手は先輩たちの背中を見て、自分から学んで、どんどん成長しています。「あれ?半年前は新人だったのに、すごく成長したな」という人がたくさんいます。

ポケトークのウェブサイトより

ポケトークのウェブサイトより

――求める人材にも、企業文化の理解が必要になるでしょうか。

当社はまだスタートアップのフェーズで、従業員も30人弱です。そのため能力以上に重視しているのが、当社の事業や社員との相性、つまり「カルチャーマッチ」です。まずは「当社の文化に合うか」をしっかり確認した上で、その後に、能力や実力を見るというふうに優先順位を付けて採用を行っています。

まず、当社の事業である「言葉の壁をなくす」というミッションに共感していただいていることが求められます。AIや新しいテクノロジーを活用して課題を解決しながら、成熟しきっていない市場を自分たちの手で作っていくことになるので、その挑戦を楽しむポジディブさも必要です。

人物像としては「明るくポジティブ」な人です。お客様に限らず、向き合う相手に対してリスペクトを持って接することができる物腰の柔らかさ、人としての良さを何より重視しています。なお、当社社長の名前は松田憲幸(のりゆき)なのですが、社員は「ノリさん」と呼んでいます。

スタートアップ企業では、追いかける目標や目的は変わらないのですが、目標を達成するために取る手段が常に変化します。目標を達成するために、柔軟に手段を変えたり、考えたりすることができるかどうかも「明るくポジティブ」という言葉の中に含まれています。

日本から世界へ、価値を提供できる立ち位置を築きたい

――「ポケトーク」の開発は、松田社長の体験に基づくものだったそうですね。

松田は新卒で日本IBMに入社し、ニューヨークでのビジネス経験もあり、英語にはそれなりに自信があったようですが、それでも英語によるコミュニケーションには苦労し、「言葉の壁」を感じることが多かったようです。

また、「日本人は英語を学ぶために膨大な時間を費やしており、英語を母国語とする人よりハンデを負っている。その労力をもっと別のスペシャリティに使えれば、日本からもっとたくさんスターが生まれるはずだし、これはテクノロジーで解決できる」と考えています。

当社の社員の中にも、松田と同じような体験をした人は少なくありません。そういった思いを共有しながら、全員で「言葉の壁をなくす」、つまりお互いが母国語のまま対話でき、深く分かり合える世界の実現を目指し、「ポケトーク」を世界に広げていこうとしています。

――人口減少で内需が縮小する中、海外事業展開はどの会社にとっても課題です。

今、2つの大きな流れがあって、1つは日本のエンタープライズのお客様が、海外でグローバル人材を増やそうとしていること。もう1つは日本の労働人口が減っていく中で、外国人労働者を受け入れられる日本にしていかなければならないということです。ここで、しっかりと価値を発揮し切るということを、まず目標にしています。

海外から見た日本のメインインダストリーというと、多くは製造業や自動車産業です。確かにこれまで、日本は「ものづくり」で世界に価値を提供してきましたが、今、世界に価値を提供できている会社が日本にどれだけあるかというと、数としてはまだまだ少ないのが現状です。

その中で当社は、「言葉の壁」という世界中のどこにでもある課題を解決するためのプロダクトを提供する会社として、日本から世界へ、価値を提供できる立ち位置を築く大きなチャンスと可能性を持っています。

今後「ポケトーク」シリーズがインフラとして導入される社会になれば、外貨を獲得できるような産業や事業を日本から生み出すことに一層貢献できると考えています。日本国内だけでなく、世界にインパクトを与える仕事を志している方にも興味を持ってもらえるのではないでしょうか。

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