東海林氏は、メッセージを発表した背景について「あまり報道されていませんが、東京都のモニタリングでは週ごとの新規感染者の増加率が1.2~1.3倍になっています」と明かす。その上で、
「600人超、700~800人と増加してきており、このまま放っておくと年末には1000人を超える可能性も十分あります」
と話す。増加傾向に歯止めがかからず、予断を許さない状況が続いているというのだ。
さらに、こうした状況下で、都内で入院の必要がある人が一日平均70人ほどにまで膨れ上がっているという。これ以上の増加を許すと、入院の必要があってもできない人が出てくる可能性がある。
「広島、横浜で起きたような軽傷だった人が突然亡くなるケースがもっと増えてくるでしょう。つまり治せる人も治せなくなる、ということです」
また、都内で3000床確保したとされている病床数についても、実態はより厳しいという。現在は約2000人が入院しており、残りが1000床と言われているが、
「例えば、10床が割り当てられている病院でも、人員の関係で10人を一気に受け入れることはできません」
東海林氏によると、一人の重症患者を診るためには、体位変換、ベッド移動などに最低でも6人は必要で、多くの病院ではせいぜい3床を同時に受け入れるのが精いっぱいという。病床数の観点からも、報道内容と実態の間に乖離があるようで「1000床と言っても、実際に稼働できるベッドは少ないのです」と明かした。
「看護師たちのストレスは計り知れないです」
看護師の疲弊状況も深刻だ。東海林氏は「自分が感染しないように対策するのはもちろんですが、家族も感染しないように気遣ってホテルで寝泊まりする人もいます」と明かす。こうした緊張は”第一波”の時からずっと続いており、
「看護師たちのストレスは計り知れないです」
と印象を語った。また、コロナ病棟には事務員や外部の清掃作業員らが入れないため、看護師が通常は行わない電話対応やトイレ掃除といった医療業務以外の仕事まで担当している。
また、感染予防のためにガラス越しやオンライン上で行われる面会についても、その度に10~15分ほど患者に付き添う必要があり、「業務量が増えたのに業務が進まない状況が続いています」と明かした。1
こうした苦労に報いたいと考える病院は多いものの、病院経営は悪くなる一方だという。
「会員病院の中には『冬の賞与が出せるか分からない』という病院もありました。こんなに苦労しているので払ってあげたいが、余力がないというのが実情です」
東海林氏は「看護師は高い使命感と自己犠牲で働いてくれています。ですが、燃え尽きてしまわないか不安です」と懸念を述べた。
Go To停止は「1~2週間遅い」
また、最近は「ポストコロナ(治療後)の患者をどうするか」という課題が浮き彫りになってきている。治療中に寝たきりで過ごした患者は、リハビリが必要なほどに筋力が落ち、退院までに時間がかかるという。同協会では現在、リハビリ病院や地域包括ケア病棟を中心に、患者を受け入れてもらえるよう呼びかけを行っている。
「重症患者を受け入れるためには、ベッドを空ける体制を取っていかなければなりません」
今回の呼び掛けに対し、一部のリハビリ病院からは「PCR検査で2回陰性」といった条件付きで受け入れてもらえる回答も返ってきているという。
今後、必要な対策については「あくまで個人的ですが」と前置きした上で、
「飛沫感染、接触感染、空気感染の予防には、人と人が会うことを防がねばなりません。そのためには、ロックダウンに匹敵する極めて強力な対応をしていただきたいのが第一です」
とコメントした。
一方で「経済のこともあると思うので、経済界・医療界と協力しながら、政府にシミュレーションを作ってほしいです」と要求。また、12月28日から全国で一時停止するGo Toトラベルについても「感染者の増加率を踏まえると、1~2週間遅いかなと感じます」と印象を語った。