定年退職したシニア世代が保育の現場で活躍! でもやはり若者の成り手を増やすことが大事
ここのところ待機児童の問題が話題になっている。つい最近も「保育園落ちた 日本死ねブログ」なる過激なブログが色々な意味で話題になったばかりだが、子供を保育園に預けることができないと、母親は働くことができず、家計にとっては死活問題になる。
さらに保育士もなり手が少なく、慢性的に不足している。そんな中、4月30日放送の「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日系)で、この問題の解決の糸口になるかもしれない情報が取り上げられていた。(文:松本ミゾレ)
10時間4万4000円の講座を受けて「グランドシッター」認定
「シニア世代に注目 講座受けて現場へ」と題されたこの特集では、定年退職をしたシニア世代を、保育士として積極的に採用する動きを紹介していた。東京都杉並区にある、保育園。ここでは現在、62歳の相澤さんという男性が活躍している。
2年前、40年間勤めた会社を定年退職し、保育園で働くことになった男性だが、保育士の資格は有していない。しかし、横浜市で開催されている、「グランドシッター養成講座」で
保育の基礎的な知識とスキルを学んだという。主催しているのは、日本ワークライフバランスサポート協会という団体だ。
なるほど、若い保育士のなり手が不足している一方で、高齢化社会であえる現代では、シニア世代が増え続けている。シニア世代に活躍の機会を増やそうと考えるのは、おかしなことではないのかも知れない。
グランドシッター養成講座の受講料は4万4000円。合計10時間の実践的な講座を受講したシニア世代を、グランドシッターとして認定しているという。
10時間というのはちょっと短いような気もしないでもないが、シニア世代ということで過去に子育てに参画した人も少なくないはず。案外たったそれだけの時間で、最低限必要なスキルが身に着く人もいるだろうか。
シニア世代活用も大事だけど、若者が「保育士になろう!」と思えない現状はおかしい
厚生労働省は、2017年度末までに、新たに子ども50万人分の預け先を確保することを目標に掲げている。そのためには、相応の施設とおよそ9万人もの保育士を確保する必要という試算がある。
2017年なんて来年だ。素人考えだが、シニア世代もその人材の頭数に入れないと、もう間に合わないような気がする。現在一部の保育園で、子どもの受け入れ数を増やすなどの対策が取られているというが、これについては保育の質の低下、それから安全面に不安の声も出ている。
番組の取材に答えた保護者からは「箱は変わらないのに入れる人数を増やしましょうとか、その場凌ぎかな」という声が出ていた。これはもっともな意見だろう。
そうなると、慢性的な保育士の不足を解消しない限り、親世代は安心も納得もできないことは間違いない。そういう意味では、シニア世代の保育現場への参入は、時代の流れとしては必然といえる。
番組に登場した保育園の園長は、取材に対し、「社会経験を積んできた方というのは、工夫したり知恵を使うことが得意」と、シニア世代活用のメリットを語っていた。保護者からも「安心して預けられる」という声も出ているようだ。
ただし、グランドシッターはあくまでも正規の資格を持たない補助スタッフという立場。根本的な人材不足の解消のためにも、補助スタッフだけで現場を回すという事態が起きないためにも、若い世代の力がこれまで通り必要であることには違いはない。
やはり、若者が保育士になりたいと思えるよう、過酷な労働環境や待遇面の改善は不可欠だろう。
あわせてよみたい:高収入と仕事の楽さ、どっちを選ぶ?