味の素が基本給1万円アップへ 所定労働時間も20分短縮して働き方改革を加速
「新たに支給される1万円のうち、ベースアップは5000円分、残りは手当等の抜本的な見直しにより生まれた原資を再配分した分です」
同社広報担当者はこう話す。同社では昨年2016年の春闘をきっかけに、残業時間や所定労働時間の削減などをはじめとし、働きやすい職場の整備に力を入れてきた。その一環として、これまで支給していた様々な手当を見直したという。
専業主婦を前提として作られていた配偶者手当は、共働き世帯が多い現代には合わないと判断し廃止。その他にも、工場勤務者に支払われていた工場夜間勤務手当や呼び出し手当、営業担当者向けにあった営業早朝手当や被服手当、寒冷地手当などを見直した。
「代わりに子育てや介護と仕事の両立を支援する新しい手当を設けました。親族の状況や人数に応じた金額を支給します」
今回の基本給1万円アップの対象にパートタイム労働者は含まれないが、「パートタイムで働く人へは、ひとりあたり5~6%、金額にして40円から60円の時給アップをする予定です」とのことだった。
働き方改革で目指すは「グローバルトップ10入り」
同社のこうした改革は、経営戦略上の重要な1つとして位置づけられている。
「味の素は中期経営計画で、グローバル食品企業トップ10入りを目標としています。そのためには優秀な人財の確保が必須です。働きやすい環境を整備することで優秀な人財が集まりやすくするために、一連の働き方改革を行っています。今回の給与アップもその一環です」
ノー残業デーやTV会議の実施もここ1年で進み、今年4月からは全社員を対象とした在宅勤務制度『どこでもオフィス』の導入も決まっている。実際に、こうした取り組みのおかげで年間の一人当たりの総実労働時間は減少傾向にあるという。
「2016年度の総実労働時間は1900時間程度になる見込みです。2015年度は1947時間だったので、大きく減りました。」
そのため、当初は2020年に予定していた総実労働時間1800時間という数値目標を2年前倒しし、2018年に達成することも先日決定した。
「労働組合の考えと会社の考えが一致したこと。そして、経営陣が『やりましょう』と強い意志を示したことの2点が、こうした決断ができた要因だと思います」
働き方改革は、ヤフージャパンが週休3日制を導入するなど、大企業を中心に本腰を入れて取り組みが進んでいる。ネットでは、今回の味の素の取り組みを受けて「残業もらう前提の基本給設定というのがまずクソなのでどんどんこーゆー流れきて欲しい」という声も出ていた。