従業員数が多いほど長時間残業、人手不足を訴える傾向 中小企業の残業実態調査
中小企業は人員や資金が不足しているケースが多いため、より長く残業している、と予想する人もいるかもしれない。しかし実際には、企業の大きさと残業時間の長さにはあまり関連がなく、むしろ人員が増えるにつれて残業時間も伸びる傾向にあるようだ。
長時間の残業は「広告・出版・マスコミ」が突出
エン・ジャパンは3月17日、従業員500人以下の企業を対象に、残業に関するアンケート調査の結果を発表した。
1か月の平均残業時間を聞いたところ、「0時間」は1%と、ほぼ100%の企業で残業が行われていた。最も層が厚いのは「1~20時間」(47%)と「21時間~40時間」(40%)で、40時間以上の残業をしているのは12%に留まった。
企業規模別に見ると、「1名~50名」の企業で61時間以上の残業をするのは7%止まりだが、「301名~500名」では26%となっている。規模が大きいほど残業時間も増加しがちだと判明した。
業種別では、41時間以上の残業をしているのは「広告・出版・マスコミ」が40%と突出しているが、61時間以上の残業をしている割合は0%だった。反面、「IT・情報処理・インターネット関連」の3%、「サービス」の1%は61時間以上の残業を経験している。
残業時間削減のためのノウハウを共有する仕組み作りを
残業の理由を複数回答で聞いたところ、全体では「取引先からの要望(納期など)にこたえるため」(51%)が最多となった。業種別では、商社・不動産・金融・マスコミなどでは「常に仕事量が多いから」が最多。サービス関連業では「人員不足」と「時季的な業務があるから」が一番の理由として挙げられている。
業種ごとに残業の発生原因が異なると分かれば、この理由を改善するための施策を打ち、残業時間を減らせる可能性がある。
規模別でも回答傾向に違いが見られる。「1名~50名」の企業で最も多い理由は「取引先からの要望(納期)などにこたえるため」(47%)だが、「301名~500名」では「人員不足だから」(55%)が最多だ。また、人員不足を残業の理由に挙げる割合は、規模が大きくなるほど高くなる。人が多いほど人員不足を感じる傾向にあるとはなんとも逆説的だが、会社が成長して仕事量が増えると、たとえ人員が多くても業務量を捌ききれないという事態が発生するのだろうか。
残業時間の上限が100時間となり、働き方改革は徐々に進んでいるが、実際に改革に取り組むのは企業である。しかし、単体での工夫では限界もあるだろう。同じ程度の規模の同業種と、残業時間削減のノウハウを共有し合える仕組みが必要だ。
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