安倍首相「非正規はやる気ない」にユニオン激怒 「非正規が正規並みの仕事をさせられているのが実態」
講演会で、安倍首相は「労働環境や待遇がいかに働く人の意志、やる気を変えるかがわかるよい例」として、ある女性の話を引き合いに出した。その女性は長時間労働で印刷会社を退職したが、現在は小売り関係の会社で「短時間正社員」としてやりがいを持って働いているという。管理職の研修にも挑戦しようとしているそうだ。この女性のことを受けて、安倍首相は次のように語った。
「不合理な待遇差を是正することで、人のやる気につなげていく。同一労働同一賃金を実現します。この同一労働同一賃金は先ほど申し上げましたように、非正規のときには無かった責任感が、正規になって生まれてくる。これはまさに経営側にとっても生産性が上がっていく。売り上げが増えていく、利益が増えていく、成長していく、必ずプラスになるはずである」
あたかも「非正規は無責任」と言わんばかりだ。首都圏青年ユニオン執行委員長の原田仁希さんも「ひどいですね。実態と乖離しています」と憤る。
「非正規の人が正規の人と同じ仕事をしているのが実態です。例えば、裁判になったベローチェの事例では、学生のアルバイトが発注やクレーム対応など本来は店長がやらなければならない仕事をやらされていたのです。安倍首相の発言は非正規労働者の実態を理解していないのだとしか思えません」
安倍首相は「非正規が契約更新の脅迫と背中合わせに暮らしていることを知らない」
安倍首相は「同一労働同一賃金」について正しく理解していない可能性もある。
「同一労働同一賃金は、雇用形態に関わりなく、同じ仕事をしている人に同じ給与が支払われるようにするというものです。それなのに『正規になって生まれてくる』というのはおかしい。安倍首相は非正社員が正社員になることと混同しているのかもしれません」
同一労働同一賃金には「雇用形態によって差別をすることなく、平等に対価を支払うという意義」がある。実現のためには、法律で賃金の差別を禁じることに加え、「労働組合側が仕事をどのように評価するのかという職務評価制度を作り、会社に提案していくこと」が必要だという。
安倍首相の発言が報道されると、ネット上でも非正規労働者の実態を理解していないという非難が相次いでいた。
「私は本当に許せない。(中略)非正規の学校の先生、非正規の地方の公務員、非正規の看護師、非正規で働く警備員…。働く人4割の非正規は責任や、やる気なく働いていると思ってんのか?」
「非正規が契約更新の脅迫と背中合わせに暮らしていることを知らないのだろうな」
安倍首相は、今回の発言によって自らが推進する「同一労働同一賃金」の実現に水を差したという見方もある。雇用形態による待遇の格差をなくすはずの政策が、首相の無知によって変な方向に行かないことを願うばかりだ。
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