保育士の約9割が「国の施策はズレている」と回答 「現場を知らず何がわかる」「20年働いても基本給は18万円未満」
厚生労働省の資料では、2016年4月1日時点の全国の待機児童数は2万3553人。政府は2020年度末までに待機児童ゼロを目標に掲げるが、背景にある保育所や保育士不足をどう解消するかは不透明だ。
「国や自治体の保育士不足に対する政策は、『ズレている、効果がない』と思いますか?」という質問には、「とてもそう思う」(62.2%)、「まあまあそう思う」(30.8%)と93%の人が「国の政策はズレていると思う」と回答している。
調査に応じた保育従事者からは、「保育園の入園や保育のあり方など、役所の人が決めますが、役所の方は現場を見に来たことも保育士の声を聞きにきたこともありません。現場を知らない人が、保育園の何がわかるのでしょうか?」など、現況を理解せずに対策講じようとする行政との温度差を指摘するコメントが目立つ。
保育士の給与は他業種と比較して低く、以前から処遇の改善がされてきた。「段階的に行われている『保育士の処遇改善』。実際に受け取っていると感じますか?」という質問には、「まったく感じない」(62.2%)の回答が最多。「あまり感じない」(22.8%)を大きく引き離している。
これについては、「給料は、民間の自治体によって違うから、市から改善手当を支給されても、1000円しか給料を上げてもらえませんでした」「公立の保育士と私立の保育士の差をなくしてほしい」などのコメントが寄せられた。
「保育士という仕事に対する評価が国全体として低い」という声も
「待遇が改善されたり、休みが取れやすくなったり、現場が他の職種並みに働きやすくなるとしたら『保育士は魅力がある・やりがいがある仕事だ』と思いますか?」と聞くと、「とてもそう思う」(65.3%)、「まあまあそう思う」(28.6%)と約9割が「やりがいがある仕事」と回答している。「保育の仕事を馬鹿にしすぎ!ただの子守りだと思っている」「保育士という仕事に対する評価が国全体として低いと思う」といった声が挙がる。
「国や自治体の保育士不足に対する政策で、不満に思うことは何ですか?」を複数回答で聞くと、「賃金アップの額が少なすぎる」(266人)がトップであり、やはり給与の低さを不満に思う人が多いことがわかる。
その後には「まず現場をよく調査して理解してほしい」(223人)、「保育施設をやみくもに増やしても意味がないと思う」(211人)が続いた。中には「保育をとりまく構造から大きく変えた方がいいと思う」(151人)という回答もあった。
アンケートのフリーコメントには、
「約20年働いていても、基本給は18万円未満。色々な手当てや残業代を含めても手取り20万円未満です。他の職種の初任給並みです」
「子どもの保育時間が長すぎる。未就学児のお子さまがいる人は時短にする等、働き方を変えれば、解決することもあると思う」
といったもののほか、男性保育士からは「世間の評価が低い。すぐに性犯罪の予備軍として見ようとする」という意見もあった。