ACが「苦情殺到!桃太郎」のCMで炎上に苦言 専門家は「普通の人がうっ憤を晴らそうとして起きる」と指摘
CMは、昔話の桃太郎をアレンジしたものだ。おばあさんが川で洗濯をしていると桃が流れてくる。おばあさんが桃を拾い上げると、
「窃盗だろw」「桃の気持ち考えたことがあるのか!」
「背景から住所分かるかも」「家族も許すな」
といったいわゆる「クソリプ」が大量に寄せられ、画面を埋め尽くしていく。おばあさんはそうした声に涙を流す、というものだ。最後は「悪意ある言葉が、人の心を傷つけている」「声を荒げる前に少しだけ考えてみませんか」というメッセージで締めくくられている。7月1日に公開され、来年の6月末までの1年間放映される予定だ。
電話取材に対し、ACの担当者は「年齢を問わずSNSを利用するようになっている。メッセージがトラブルを引き起こすこともあり、送る前に注意してほしい」と語った。スマートフォンの普及で子どもや高齢者もインターネットを利用するようになっていることから、「全年齢層に届くような内容の広告を作成した」という。
2015年度版の情報通信白書によると、SNS炎上に関する新聞記事は2013年を境に大幅に増加している。炎上そのものが増加し、新聞社がそれを取り上げる頻度も増えていることがわかる。炎上しても仕方がないような事例も中にはあるが、批判が過度に殺到したり、理不尽な「クソリプ」が大量に送り付けられたりすることの背景には何があるのだろうか。
落合さん「批判する人は読んだ人が傷ついていることを知って」
ソーシャルメディア活用を専門とするネットメディア攻略研究所代表の落合正和さんは、「炎上が発生するのはインターネットが匿名で利用されているから」だという。
「ツイッターの利用者は5000万人に上りますが、匿名で利用している人が多い。日頃のうっ憤を晴らすため、顔の見えない相手を攻撃する人が多いのでしょう。クソリプを送ったり、炎上させたりしている人は、憂さ晴らしをしたいだけのごくごく普通の人だと思います」
2014年度の情報通信白書によると、日本では匿名でSNSを利用する人の割合が他国よりも高い。フェイスブックでは実名利用する人が匿名利用する人の割合を上回っているが、ツイッターでは匿名利用が7割を超えている。アメリカやフランス、韓国ではツイッターでも実名利用の方が多いこととは対照的だ。
落合さんは、ネット独自の「共感の文化」も炎上を引き起こす一因だという。
「ネットには元々、気に入った投稿に『いいね!』を押す共感の文化があります。共感できるかどうかが1つの基準になっているんです。それが『同じ意見じゃないと認めない』『共感できないものは排除する』という姿勢につながってしまうのかもしれません」
落合さんは、クソリプを書き込む人に「相手が傷ついていることを知って」と呼びかける。
「クソリプを送る人たちは、『影響力はない』『どうせ読んでいない』と思っているのかもしれません。特に相手が芸能人の場合だとそう考えている人が多いと思います。しかしクソリプを送られた方は、それを読んで傷ついています。そのことを理解してほしい」