人手不足が理由の倒産、4年半で2.9倍にまで増加し過去最高 建設業やサービス業など、きつい業界で深刻
帝国データバンクは7月10日、2017年度上半期に従業員の離職や採用難など、人員確保を理由に倒産した企業が49件あったと明らかにした。人手不足を理由にした倒産件数が40件を超えたのは、調査を開始した2013年以来初めてで、倒産企業の負債総額も218億9900万円と過去最高額を更新している。
細かい業種で見ると「老人福祉」「道路貨物」が特に深刻
2017年上半期までの4年半で、人手不足を理由に倒産した会社は290件あった。負債規模別に見ると、1億円を下回った会社が137件と最も多い。また、1~5億円未満は117件、5~10億円未満が22件、10億円以上が14件と、小規模企業の倒産が目立つ。
地域別に見ると、東京都が39件と最多で、福岡県が22件、北海道、大阪府が18件と、各地方の主要都市を要する都道府県が上位に並んだ。
業種別件数では「建設業」の105件の倒産が最多で、次が「サービス業」(92件)だった。この2つだけで、発生した290件の倒産のうち、67.9%を占めることになる。
業種細分類別に見ると、上位には「老人福祉事業」(19件)や「ソフトウェア受託開発」(16件)など、きついと言われている業種・業界が目立つ。また、建築業界からは「木造建築工事」(15件)、「建築工事」(10件)、「内装工事」(9件)など複数業種が見られ、人手不足の深刻さが伺える。
日建連会長は建設業界について「人手不足は虚像だ」と訴えていたが……
建設業の業界団体である日建連は2016年、「『技能労働者不足』に対する考え方」という報告書をまとめている。そこでは、新しく立てられる建物や住宅の面積減少率と労働者の減少率を比べ、「労働生産性を横ばいとしても、需要増への対応力は十分ある」と述べていた。
新卒者の入職も2009年を底に増加が続いていることを挙げ、昨年秋の記者会見では山内隆司副会長が「人手不足は虚像だ」と発言するなど強気の姿勢を見せていたことが、日経新聞や日刊建設工業新聞の報道から明らかになっている。
しかし、今年4月にリクルートワークス研究所が発表した2018年卒業者の求人倍率を見ると、建設業の求人倍率は9.41倍と、前年度の6.25倍より3.16ポイント上昇し、最高記録を更新している。こうしたことを踏まえると、やはり建築業での人手不足は深刻だと言わざるを得ない。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査を見ると、2012年以降、建設業に従事する労働者の平均賃金は男女ともに上昇している。もちろん、背景には日本の労働人口自体が減っている、ということもあるが、こうした労働環境改善の様子が十分伝わっていないのも、人手不足が解消しない原因の1つかもしれない。