転職初日に「有給休暇」を付与する案が急浮上 「転職を不利なものにしている」制度は改められるのか
現在の労働基準法では、転職者も新卒者も、入社後半年間は法定年次有給休暇が付与されない。また、有給休暇は勤務期間によって付与日数が変わるものの、他社での勤務期間は勘案されないため、転職者は、有給休暇の上限20日間が付与されるまで再度ゼロから年数を積み上げなければならない。規制改革推進会議ではこの点を、
「休暇利用に関する多様なニーズを満たしているとは言えず、また、結果として転職を不利なものにしている」
と指摘。働き方の多様化と人口減少が進む中、「『失業なき円滑な労働移動』により人材の最適配置が可能となるようにし、働き手一人一人が自らの能力を最大限発揮できる環境を整備することが重要である」と述べていた。
その上で、勤務開始日に有休を1日、その後一か月ごとに1日、7か月目に4日付与することで入社後半年を待たずに利用可能にしたり、入社後1年半で有給が20日に達する仕組みが提案されていた。
第一次答申の内容は、7月12日に開かれた労政審の分科会でも確認された。今後、これらの提案が認められた場合、厚労省の「労働時間等設定改善指針(労働時間等見直しガイドライン)」内に、年次有給休暇付与の早期化を検討するよう促す文言が盛り込まれ、9月下旬には交付される見込みだ。
「まずは機運の醸成が大事」と厚労省担当者
ただし指針は、企業が労働時間や休日の設定をする際に参考にされるもので、労基法のような罰則規定も拘束力もない。そのため、指針の変更がどのくらい効果を持つのか、実際に有給休暇の早期付与が行われるのかは不確定だ。
それでも、厚労省の担当者は、指針改定を意義あることだと考える。その目的は「有給休暇取得を容易にするための機運を高める」ことだからだ。
第一次答申にも、指針改定後2年を目途に休暇付与の早期化に関する調査を行う旨の記載や、結果が分かり次第「関係法令の改正を含む必要な方策について速やかに検討・結論」することが明記されている。指針改定で様子を伺い、その結果によって更なる対策に取り組むということのようだ。
答申では有給休暇の早期付与の他、転職先を見つけやすくするための施策として、「ジョブ型正社員の雇用ルールの確立」なども挙げられていた。この施策は、職務内容や勤務地、労働時間などを限定した「ジョブ型正社員」の雇用ルールを整備することで、「個々人が安心して多様な働き方を選択できるよう」促す狙いがある。
これについて担当者は「なんらかの検討はする」方向にはあるものの、具体的にどうなるかは未定だと述べた。なお政府では、本件について9月8日まで、e-Gov上でパブリックコメントを募集している。
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