夫は知らない妻が抱えるワンオペ育児の苦悩 「深夜1時に寝て朝4時半に起きる」「トイレにこもって泣く」
日本では「夫は外で働き、妻は家事と育児」という考えが主流だったが、近年は「イクメン」という言葉が普及するなど、男性も積極的に育児参加すべきという風潮に変化しつつある。
しかし夫は平日仕事に長い時間を費やしているため、育児に携わる時間は限られる。妻が育児を一手に担う状況は、飲食店で一人の店員が何もかもをこなすことを表す「ワンオペ」という言葉を用い、「ワンオペ育児」と呼ばれる。キャリコネニュースは、ワンオペ育児をする女性に話を聞いた。
「体調不良の時でも自分が動くしかない」
取材に応じてくれたのは、2歳の子どもを持つ専業主婦のAさん(30代)。Aさんは
「気持ちを話せる相手がおらず、精神的に参ってトイレにこもって泣くことがあります」
と、ワンオペ育児の辛さを吐露した。
毎日のタイムスケジュールはこのような感じだ。午前4時半に夫の弁当作りのために起床。日中は子供の散歩や買い物をし、子どもが昼寝中に掃除や夕食の準備をする。夕食後は子どもの寝かしつけをし、洗濯や翌日の弁当準備などをすませる。床に就くのは深夜1時を回ってからだ。家事と育児に追われ、1日の中でのんびりした時間はほとんどない。Aさんは「ゆっくりお風呂に入りたいです」と漏らす。
たとえ体調を崩しても、育児は休むことができない。夫を頼りたくても、休日出勤も多いほか、夜勤もあるため任せられない。Aさんの両親も家業が忙しくあまり頼ることはできない。結局はAさんがやるしかないのだ。
「頼るところがなく、自分が動くしかないことが辛いです。子どもが『イヤイヤ期』に入り、とても手を焼くのでイライラしてしまうことも多いです」
一時保育や家事代行など第三者の手を借りる方法もあるが、Aさんは「夫の理解がないので…」と一言。夫はAさんの実情を知らないため、Aさんが育児に苦しんでいることがわからない。よしんば理解を得たとしても、経済的な負担が壁になる。経済産業省によれば、家事代行サービスの利用率は2%にとどまるが、理由の1位は「価格の高さ」だ。例えば大手家庭用品メーカーが提供する家事代行サービスは、東京都の場合、2時間で9000~1万円ほど。Aさんも「経済的な負担を考えると……」と尻込みする。
ライターとして働く30代男性の筆者(編集部S)も「ワンオペ育児」を経験したことがある。妻の体調不良のため数日間、生後1か月の息子の世話を一人でしたときは想像していた以上にきつかった。
ミルクやオムツ交換など、やることが次から次へとある。息子の泣き声が聞こえたら、、その時にしていたことを中断しなくてはならない。何をやっても泣き止まなかった時は、精神的に疲弊した。「次はいつ泣くのか」とピリピリしていた。また仕事なら会社と家を行き来することで「オンとオフの区別」の切り替えをしていたが、育児には区切りがない。ずっと追われている感じがした。
「夫の会社は有給を取ろうとするといい顔をしない」労働環境の改善は急務
男性が育児にもっと携われば解決かといえば、そう簡単ではない。長時間労働が当たり前の労働環境に加え、男性が家庭を優先することに周囲からの理解を得られない問題がある。20代、30代といった子育て世代の男性の上司は、家事も育児も妻に任せっきりで仕事をしてきた人が多く、家庭を優先する考えが理解できないこともある。育児参加する男性は嫌がらせ(パタハラ)を受けるケースもあり、家庭と仕事の板挟みに苦悩する男性もいる。
Aさんの夫が勤務する会社では、パタハラまではいかないが、「有給を取ろうとするといい顔をされない」雰囲気があるという。
「私と子どもたちが体調を崩しても休んでもらえません。仕事に穴を空けられない事情はわかるのですが、もっと休みを取りやすくなって欲しいです」
共働き世帯は1980年には614万世帯だったが、2015年には1114万世帯に増加している。それにもかかわらず、家事・育児の負担は妻に大きく偏ったままだ。2011年の社会生活基本調査で、共働き夫婦で子供がいる世帯の1週間あたりの家事・育児に費やす時間を見ると、夫は家事・育児に1時間ほどだが、妻は6時間ほどを費やしている。専業主婦の負担はさらに増すことは想像に難くない。しかし、「育児は妻がやればいい」という考えはもはや通用しなくなっている。夫婦が仕事と育児の両立ができ、負担がどちらにも偏らない社会が望まれる。
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