巨木を運ぶことは人間のエゴなのか――プラントハンターが「世界一のクリスマスツリー」輸送プロジェクトにかける想い
槇原さんは自宅の庭を西畠さんに依頼しており、「お庭の打ち合わせ中にこの(セレモニーでライブをする)話が出てきて、すごくびっくりした」と話す。
「(クリスマスは)宗派を超えて、誰かのために何かをしてあげるすごい大事な日。こういう提案をされて非常に感動しました。絶対成功させたいな、と」
と熱っぽく語った。プロジェクトに当たって、西畠さんは「槇原さんの『僕が一番欲しかったもの』という曲に勇気づけられた」という。
「拾った素敵なものを他の人にあげていたら、周りのみんながハッピーになっていたという素敵な曲。食っていくために植物を売っていたけど、今回は人の役に立ってみたいと思った。この曲に勇気づけられて今日も明日も明後日も、ツリーのところに戻って仕事をします」
ちなみにクリスマスの思い出を聞かれると、西畠さんは「いつも働いてるなあ。クリスマスになったらクリスマスの、正月になったら正月の花を届け……という思い出です」と回答。槇原さんは浪人時代のクリスマスを挙げ、
「実家が電器屋である家庭に冷蔵庫を運んでいたら、小さな子どもがうちの父と母のことをサンタクロースだと思ってえらい喜んでくれて。何かを人にしてもらうのもいいけど、してあげるのもいいもんだなって思いましたね」
と話した。
プロジェクトのために3億円借金「10万枚売れても億単位の赤字」
西畠さんはこのプロジェクトで、2つの点で「世界一」を目指している。1つ目は「高さ」。巨大なクリスマスツリーで有名なニューヨーク・ロックフェラーセンターだが、今年は23メートルのツリーが立てられる。
「あれより大きなツリーが立ったら面白いなって思いました」
といい、30メートルの「あすなろ」を用意した。
またツリーといえば、もみの木やひのきがよく使われるが、「ひのきより格下とされているあすなろが、これをきっかけに世界一に輝く。アメリカンドリームじゃないですけど、そんな思いもあって選びました」と説明した。
2つ目の世界一は「オーナメントの数」。ツリーには、北陸の雪吊りをイメージした縄が張られ、オーナメントとして来場者らの夢や希望がかかれたカードが吊るされる。この装飾数が5万枚を超えるとギネスに登録される。
「このカードは反射材で出来ていています。最低限の照明に当てると風に揺らめいて、キラキラ光る、自然の力を利用したイルミネーション。あすなろの木も風を利用して花粉を飛ばし、命を繋く。このオーナメントは『命』を象徴する光です」
西畠さんは、現在クラウドファンディングサービス「Makuake」で支援者を募集中だ。しかしこのプロジェクトのため、既に3億円の借金をしている。
「クラウドファンディングで儲けようと思っているわけではなくて、10万枚売れても億単位の赤字。でもみんなで世界一を取るための画期的なアイディアだと考えています」
なおプロジェクトが終わったあとのツリーについて「使い道は非公表」としているが、「うっかり言っちゃうと、記念品にしようと思っています」とも語っていた。
「巨大な木を多大な労力をかけて運ぶことで『この木が可哀想』とか『人間のエゴなんじゃ?』とか、そんな意見が自然に出てくると思う。議論になることが僕の願いで、実際人間1人が一生に消費する量は20メートルの木を110本分。木の命をいただいて生きていることも伝えたかった」
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