店員を長時間拘束、土下座を強要、SNSで誹謗中傷――接客業で働く人の約6割が客からの迷惑行為を経験
接客業で働く人のうちの56.9%が、客から行き過ぎたクレームなどの「迷惑行為」を受けたことがあるという。日本労働組合総連合会(連合)が12月21日、「消費者行動に関する実態調査」の結果を発表した。
一般の消費者1000人のうち、サービスや商品について、苦情・クレームを言ったことがある人の割合は39.2%だった。接客業で働いている人1000人に同じ質問をしたところ、58.6%の人が苦情・クレームを言ったことがあると答えた。
迷惑行為を受けがちなのは「公務員」「情報・通信」「運輸・郵便」
どのような内容の苦情・クレームだったのかを聞いたところ、一般消費者では「食べ物に異物が混入していた」(32.4%)、「商品が不良品」(31.4%)が多く、接客業従事者では、「商品が不良品」(38.4%)、「注文した料理が出てこない/出てくるのが遅い」(34.3%)が多かった。異物の混入や商品の欠陥は明らかに店側の落ち度であり、苦情を言うのは仕方のないことだろう
苦情・クレームに対する対応で許せないものを聞いたところ、一般消費者では「色々な部署をたらい回しにされる」(41.8%)、「こちらに落ち度があるような言い方をされる」(35.3%)と答える人が多かった。
接客業従事者に、消費者から受けたことがある迷惑行為について聞いたところ、「暴言を吐く」(33.1%)という回答が最も多く、次に多いのは「威嚇・脅迫的な態度を取る」(28.5%)だった。
「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」(16.7%)、「従業員を長時間拘束する」(10.4%)といった迷惑行為を受けたことがあるという人も少なくない。中には、「セクハラ行為」(3.5%)や「暴力を振るう」(3.3%)、「土下座を強要する」(1.7%)など「迷惑行為」というよりは、「犯罪」の被害にあっている人もいた。また、「SNS・インターネット上で誹謗中傷」されたことがある人も2.3%いた。
迷惑行為を受けたことがある人の割合を業種別に見ると、公務員で79.4%と最も高く、情報通信(69.6%)、運輸・郵便(66.7%)が続いた。
迷惑行為が起きる原因は「消費者のモラルが低下」したこと
こうした迷惑行為について、マニュアルの作成や研修は行われているのだろうか。接客業従事者に聞いたところ、「実施されている」が42.9%で、「実施されていない」が57.1%だった。迷惑行為への対策が施されていないという人が6割近くいる現状について、連合は「迷惑行為に対するマニュアル整備や教育の実施など、企業の対応は十分とはいえない状況」と指摘している。
一般の消費者に、他の消費者の迷惑行為を直接見聞きしたことがあるか聞いたところ、「ある」と回答した人が58.4%に上った。内容としては「暴言を吐く」が42.5%で最も多く、「威嚇・脅迫的な態度を取る」(28.1%)が続いた。
こうした行為について、どのように感じるかを聞いたところ、「非常に不愉快」(66.9%)と「やや不愉快」(17.7%)を合わせて、不愉快だと感じる人は84.6%にも上る。直接、迷惑行為を受ける店員だけでなく、見聞きする他の消費者も不愉快に感じているようだ。
なぜ迷惑行為が起こってしまうのか。「消費者のモラルが低下した」と考える人が最も多く、一般消費者で58.5%、接客業従事者で65.7%に上った。行き過ぎた苦情やクレームでうつ病を発症してしまう店員もいる。消費者は今一度、節度を問われることになりそうだ。