運転免許の自主返納制度、認知度9割 返す代わりに「電車・バスの割引」「買物宅配サービスの充実」望む声も
制度の認知率は93.2%と、9割を超えていた。特に50代や60代での認知度が高く、自身が高齢者に近づくにつれ、身近な問題として意識が高まっていく様子が伺える。
返納の動機で最も多かったのは「自分の身体能力の低下を感じたとき」で64.8%。ほかには「家族や友人、医者等から運転をやめるよう言われた時」(37.4%)、「交通違反や交通事故を起こしたとき」(17%)が多かった。
認知率の高さを裏付けるように、実際に自主返納した人の数も年々上昇している。NHKや朝日新聞の報道によると、警察庁のまとめでは昨年1年間の自主返納者数は42万2033件で、一昨年より9万336件増えているという。このうち約6割は75歳以上が占める。
一方、自主返納制度と比較し、運転経歴証明書の認知度はまだ低い。
運転経歴証明書は、免許を返納した日から5年間さかのぼって運転の経歴を記載し、これまで安全に運転してきたことを示すもの。2012年4月1日以降に発行されたものであれば、運転免許証と同じように身分証明書として使用できる。同証明書を知っていると答えた人は全体の52.9%と半分程度で、18歳~29歳の年代では31.5%に留まった。
ホテルや飲食店などの中には、証明書を出すと割引サービスを受けられるところもあるが、メリットをあまり感じていない人が多いのかもしれない。
「安心して自主返納できるようになるために必要なこと」として多く挙げられたのは「電車やバスなどの公共交通機関の運賃 割引・無償化」(64.9%)と「地域における電車、バス路線などの公共 交通機関の整備」(59.4%)。「買物宅配サービスの充実」(47.1%)も3番目に来るなど、車の代わりになる移動手段を確保できる状況を望む声が強い。
運転適性相談を知っているのは4人に1人
運転適性相談の認知度は25.5%で、4人に1人しか知らない状況であることも明らかになった。30代までの若い世代では8割が知らないと回答していて、認知度が最も高い70代でも、31.6%に留まっている。
道路交通法では、運転免許試験に合格した場合でも、障害や病気を理由に免許の交付拒否や取り消し、一定期間の交付保留ができると認められている。しかし、これらの措置は症状や状況から、都道府県公安委員会が個別に判断すべきとされていて、障害や病気を持つ人向けの相談窓口として「運転適性相談」を実施している。警察庁ではホームページで
「運転免許に一定の条件を付すことにより補うことができる場合や、治療により快復する場合等がありますから、積極的にこの窓口を利用されることをお勧めします」
と制度利用を勧めているが、認知度が低く、十分に周知されていない実態が明らかになった。