“愛情弁当”信仰も原因? 横浜市、いまだに実現しない中学校給食 「母親は5時起き、父子家庭は手がまわらないことも」
保護者が中心の市民グループ「横浜にも中学校給食があったら『いいね!』の会」では、2015年に市民アンケートを実施。3372人のうち95.7%が給食を実施してほしいと回答した。
さらに保護者からは「朝5時に起きて弁当を作るのが大変だ」といった意見が寄せられたという。同会の担当者は、弁当作りの大変さについてこう話している。
「中学になると部活があるので、朝早く起きないと間に合いません。夏場はお弁当が痛むのも悩みの種です。また家庭によって様々な事情があり、父子家庭や、障がい児のいる家庭ではお弁当作りに手が回らないということもあるようです」
生徒の家庭が様々な事情を抱える中、毎日の弁当作りを求めるのはやはり無理があるのだろう。そもそもなぜ横浜市には給食がないのか。市の教育委員会の担当者は、
「1950年代後半から1960年代にかけて、人口が急増し、学校建設が急ピッチで進められました。そのとき教室を優先して建設を進めたため、給食室の準備が遅れてしまったんです」
と説明する。給食室がなく、給食を作れない学校が多いというのだ。しかし同会では、「小学校で作って中学校に運ぶこともできますし、老朽化した校舎を建て替える時に給食室を設置すればいいのではないでしょうか」と代替案を提案している。
また同会は、かつてあった「愛情弁当」という考えが給食の導入を遅らせてきたのではないかとも話している。”母親が作った弁当”といえば聞こえはいいが、当の母親の負担になってしまっているのが現状だ。
「共働きの家庭が増える中、配達弁当『ハマ弁』の導入を決定」
市では2016年、市内12校で希望者に提供する配達弁当「ハマ弁」をスタートした。教育委員会の担当者は、導入の経緯をこう語っている。
「共働きの家庭が増える中で、弁当を用意するのが難しい家庭も増えてきました。いくつか対応方法を検討したが、給食センターは用地の確保が難しいなどの問題があり、『ハマ弁』が良いということになったんです」
しかし1週間前に注文しなければならないといった使い勝手の悪さから、今年5月の喫食率は約2%に留まっている。今年4月には1食あたり6000円の公費が投入されていることも判明し、物議を醸した。
同会は「ハマ弁」について、「私たちが求めているのはあくまで給食です。皆で同じものを食べなければ、食材や献立について学ぶ『食育』もできません。『ハマ弁』に割いている予算を給食実施に使ってほしい」と話している。
しかし当の横浜市は、依然として給食を実施する予定はないようだ。教育委員会の担当者は、「給食を求める声が少なくないということはわかっています。しかし横浜市が目指すのは『ハマ弁』の喫食率向上です」と話す。
利用率を上げるため、今年4月には最大130円の値下げに踏み切った。今後は、当日でも予約できるように仕組みを見直していくという。