「日本より中国のほうが待遇いい」と中国の介護現場 「外国人の介護人材争奪戦」に「賃金低すぎて集まるわけない」の声
人手不足の介護現場で、アジア人材の奪い合いが起きている。介護人材は7年後の2025年には34万人不足するとみられており、積極的に外国人を採用する介護施設が急増している。
7月11日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)がその現状を紹介すると、視聴者からは「人材争奪戦と言いながら待遇改善しない(できない、やらない)」などと落胆の声が上がっていた。(文:okei)
看護大学を出たフィリピン人看護師が月14万円で働く
香川県坂出市のある特別養護老人ホームで働くスタッフは、フィリピンやインドネシアなど、60%以上が外国人だ。日本で働くことのできる外国人労働者は、高度専門職、留学生のバイト、技能実習生のほかに、「EPA(二国間看護・介護協定)」を結んでいるフィリピン・インドネシア・ベトナムからの介護人材がいる。
この2国間協定で日本にやってきたメイさんの月給は14万円ほどで、日本人と同じ待遇だ。フィリピンの看護大学を卒業し、看護師の資格を持っている。フィリピンでは看護師の給料が5万円ほどと低いため、長女である彼女は7人家族の生活費を稼ぐために来日。月5万円を仕送りしている。
メイさんは優しい雰囲気の女性で、「(お年寄りの)状態が良くなるように、何かいいことをしたいといつも考えてます」と前向きだ。お年寄りからの評判もいい。
しかし、この施設では最近採用がうまく行っていない。年々、外国人人材を欲しがる介護施設が増えているからだ。介護協定で来日できる労働者900人に対し、去年は約1900人の求人があった。アジア人材の奪い合いが起きているのだ。
そんな貴重な人材にも拘わらず、原則4年で「介護福祉士」の資格を取れなければ、滞在は延長できず帰国しなくてはならない。試験は日本語で、もちろん漢字も覚える。試験に落ちてやむなく帰国した人は、この施設では20人にもなるそうだ。もちろん施設では試験勉強を支援していたが、厳しい制度にこちらが申し訳なくなってしまう。
中国人「日本の介護士の給料は低いと聞いている」
政府は6月5日、介護など5分野で新たな制度による外国人労働者の受け入れを拡大する方針を決定した。7月1日には、「介護技能実習生」の第一号として中国人女性2人が来日している。EPA以外の幅広い国から介護人材を受け入れる狙いがあるが、今後は中国からの介護人材の受け入れは難しいとみられている。
一人っ子政策で高齢化が急激に進む中国は、やはり介護人材は貴重な存在だ。中流層が入所している中国・上海の介護施設では、介護スタッフの月給は8~10万円で、上海市の平均と同じ水準だという。しかも、食事と住居は無料で提供される。中国の施設責任者は、
「日本の介護士の給料は低いと聞いている。中国の方が待遇の水準が良いと思う」
と語った。耳の痛い話である。福祉の専門家は「貨幣価値の差がだんだん無くなれば、(中国人材の来日は)難しい」とコメント。今後日本は、職場として選んでもらえない恐れがあるのだ。
これに対して視聴者からはネットに「人材争奪戦と言いながら待遇改善しない/できない」「賃金が低すぎるから人材が集まるわけない」など、批判と落胆が入り交じった声が上がっていた。
スタジオでは、番組コメンテーターのエコノミストたちが、外国人に選ばれるためには、「希望」や「日本語の習得援助」などが大切と強調した。足りない労働人口を補うためには、外国人労働者の受け入れが当然なのだろうが、日本の介護スタッフの待遇改善に一切触れないのも違和感があった。