就任した瞬間、台風→北海道地震 余市町・齊藤町長の怒涛の2日間「ネットのおかげで町民の欲しい情報・困っていることを把握できた」
余市町は札幌市から車で約70分の距離に位置し、「ニッカウヰスキー余市蒸留所」や「余市ワイン」などで有名な人口約2万人の町だ。
会議では、ライフラインの確保、必要な場所への非常用電源配備のほか、高齢者を始めとした災害弱者への支援や、学校・児童・乳幼児関係の方針、医療機関との連絡体制の構築について話し合った。また停電のため、夜明けと共に被害状況を確認することなどを決めた。
齊藤町長は「余市は特段の被害はありませんでした」と語る。7日8時時点で、町内の小中学校は臨時休校になっているが、2か所の避難所は閉所、公民館・図書館などの公共施設は開館し、ゴミ処理場も受け入れを再開している。今回の地震で最も大変だったことを聞くと、
「停電ですね。高台にある家は上下水道にも影響あるし、オール電化の家庭で赤ちゃんがいる家庭はミルクを作るのにも大変だったと思います。長時間に渡る停電はきつい。どれだけ電気に依存しているか思い知らされました」
と語った。また停電が長期に渡ると予想されたため、「テレビを見られない方がほとんどで、ラジオの普及も限定的。最も迅速な情報収集手段がSNSだと思い、フェイスブックと余市町公式サイトに随時情報を載せました」と話す。
「LINEでの情報配信アカウントは必要」 ネット発信の問題点はデマの拡散
齊藤町長は震災後から継続して情報を自身のフェイスブックにも投稿していた。6日午前4時15分には「余市町は震度4。余市町でも全域で停電が続いています。北海道電力によると、復旧の目処はまだ明らかではないとのこと」と投稿している。
他にもライフラインに関する情報や、断水・停電に関するデマ情報への注意喚起などについて投稿。翌7日午前0時ごろには電力が全域復旧したことを伝えた。
「他にも町民約1000人のフェイスブックユーザーの多くが見ている『余市FB友の会』で情報を流し、口コミでの伝達を促しました。町公式SNSアカウントはなく、マンパワーの問題もあるので、早急に新たなSNSアカウント作成は考えていません。ただ、LINEでの情報配信アカウントは必要ですね」
このようなネットでの発信について「迅速性の観点から有効」といい、「双方向のコミュニケーションなので、町民がどのような情報を知りたく、何で困っているのかを把握できた」と話す。乳幼児検診に関する情報発信や、高齢者への情報伝達への対応はこのコミュニティから出た声だという。
「ネット発信の問題点は、やはりデマの拡散。断水になるとか、『NTTの人の話』として携帯の基地局の電源が無くなり使えなくなるとか情報の出所が不明の情報が回ったのが問題です」
また、ネットを使わない高齢者世代のケアも必要といい、「紙での情報配付と、ケアマネージャ等を経由しアナログ人海戦術」で情報を提供した。
「果物が数千万の被害」と投稿すると「買い取って製品に出来るかも」と支援の声
地震発生の前日9月5日、齊藤町長の登庁1日目は、平成最強クラスといわれる台風21号の対応から始まった。
「午前0時から町長に就任なので、役場スタッフとは電話で事前に連絡をとり、台風の対応を報告受けるなど連絡体制を確保していました」
役場の職員が夜通しで台風を警戒。倒木での道路寸断が数か所発生したが、すぐに全て撤去して復旧させた。夜が明けてからは、河川、道路の状況や被害を確認した。農業被害としてはリンゴとナシの落下被害があったという。
「この被害についてもフェイスブックに投稿したら、首都圏で飲食店チェーン会社の友人から『加工に使えそうな状態のものなら買い取って製品に出来るかもしれない。送って欲しい』という連絡がありました」
残念ながら地震のため実現はしなかったが、投稿には意義があったようだ。町長就任後、怒涛の2日間について感想を聞くと「優秀な役場スタッフの貢献により、乗り切ることが出来ました。スタッフの尽力に感謝しています」と話す。
今後の災害対策については「今後も迅速な緊急対策会議の立ち上げ、情報収集と警戒、防災情報の提供、対応をしていきますが、余市町は防災無線が整備されていません。防災無線の導入が論点になると思います」という。また町長としての今後については、
「多くの町民の皆様の付託を受けて町長にならせていただきました。それに応える、町民の生命・財産を守り、余市町を未来に繋いでいくべく、余市町の為に全力を尽します」
とコメントした。