五輪ボランティアへのプリカ支給「意味ない」 若新雄純氏「決まったことを決まった通りにやるのは労働。1000円で若者巻き込むな」
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は9月18日、大会ボランティアに対し、1日あたり1000円のプリペイドカードを渡すことを決めた。
ただ、9月20日に放送された『モーニングCROSS』(MX系)に出演した慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は、この対応を「本当に意味のないプランだと思います」とバッサリ切り捨てた。(文:石川祐介)
創造力を発揮できる余地があれば、無報酬でもボランティアする人多いはず
若新氏はオリンピックボランティアについて「創る余地が全く無いのが問題」と指摘する。ボランティア参加希望者が集まりそうにないのは、ボランティアそのものに価値を見出さないからではない、というのだ。
「例えばウィキペディアが始まった頃、従来の価値観で辞書を作ってきた人は『無報酬の人達で世界一の辞書が作れるわけがない』『何の利益があってやるんだ』って言っていた。そうじゃなくて、報酬は1円もないけど、みんなのためのインフラとか、みんなのために自分が創ったって痕跡が少しでも残ってるってことが重要」
そのため、創造力が発揮できる余地があれば、報酬が発生しなくてもボランティアに参加する人は多いはずだと推測する。
ただ、五輪のボランティアについては「説明サイトを見てると、『初心者の方でもここに来ていただければ、やることはマニュアル化されてて安心できますよ』みたいになってて、新たに創る余地が(ない)」と指摘。詳細な役割分担やマニュアルが、かえって参加意欲を下げてしまっているという。
「決まったことを決まった通りにやるなら、時間の切り売りになっちゃうから、これで『交通費1日1000円あるよ』って言われても。(中略)お金を持ち出した瞬間に一気に、ブラック労働に近いものになる。安く使われてるって状態になる」
プリペイドカード配布策は、オリンピックボランティアを日給1000円のブラック労働にしてしまうと説いた。
「マニュアル通りで安心」っていう65歳以上の人だけでやればいい
若新氏は、今から全てのボランティア業務に「創る余地」を設けるのは難しいだろうと、オリンピック委員会に一定の理解を示すが、
「核の部分は無理かもしれないけど、『プラスアルファのことをしよう』と、自由に創れる部分は作っておかないと。今全部丁寧に作り込まれていて、『そこに加わってください』ってなると、安い労働になっちゃいます」
と、ある程度の自由は必要だと語る。さらに、「若い世代ほど創る余地を求めているので、若者を募集するのは止めて、『マニュアル通りで安心だ』って言う定年退職したシニアの人だけでいいんじゃないですか」と提案した。
「戦後日本を創ってきた人達が、最後の思い出にやりたいんだから、ボランティアも若者なんか全員いない、今の65歳以上は元気だから、東京オリンピックのボランティアはおじいちゃん、おばあちゃんだけでやろう」
最後には「若者を巻き込むな、1000円で」とも呟くなど、五輪ボランティアの扱いに不満を表した。