医師不足地域では残業上限「年1920時間」も 勤務医の働き方改革案に医労連「労働者として扱って」
更に問題視しているのは、国が医師不足の地域で例外的に設けようとしている上限時間だ。医労連の担当者によると、地域医療の確保を理由にした上限時間は、960時間を更に上回る1920時間で検討に入っているという。
「1920時間というと月160時間です。『そんなところにいたくない』と医師が別の場所に移り、さらに医師不足が進むことも懸念されます。上限時間を設けるなら、もっと短くすべきです」
国は今後、AIの活用や高齢化などの要因で、医師の需要は減ると予測している。今年5月に出された「医師需給分科会第三次中間とりまとめ」では、医師の需要が最も大きいケースを想定した場合でも、2040年には2.5万人の過剰供給になると見込んでいた。現在一時的に増やしている医学部の定員は今後、減らす方向で議論されることになる。
「過労死が起こるのは医師の絶対数が少ないから。医師を増やして」
しかし、医労連の担当者はこの方針に疑問だ。医師数の増加に踏み切らなければ医師の労働環境は改善しないと考える。
「特に勤務医の絶対数が足りません。数が足りないから過労死が起きるんです。当直後に通常業務をするなどの働き方は、医師・患者双方の安全が担保できません。交代制勤務を導入するなどの対応をすべきで、そのために医師の増加が必要です」
医師数の増加は勤務医が要望することでもある。2017年、勤務医で作る労働組合「全国医師ユニオン」が実施した調査では、「働き方改革で医師の労働環境は改善する」と答えたのは18.1%で、「ほとんど改善しない」(58.1%)が大半を占めた。改善を望む労働条件として最も多く支持されたのは「完全休日を増やす」(50%)ことで、そのための手打ちとして望むこと1位は「医師数を増やす」(63.7%)だった。
医労連の担当者は、医師の時間外労働の上限設定について「医師法の考え方を全面に押し出し、『来られたら断れない』状態にするのではなく、医師を労働者として扱っていく必要がある」と主張していた。検討会は、2019年3月に最終的な取りまとめを決める予定だ。