元ニートたちが居酒屋を運営「プレ経営者」の取り組み始まる 「持たざる人が持つ人から奪うための一番ちゃんとした方法が飲食」
納富氏は今回のプロジェクトの狙いを「自律分散型、非管理型のマネジメントで店を運営すること」だと話す。飲食店のフランチャイズ経営は通常、本部や雇用側が店員を指導し画一的なサービスを提供することが主流だが、この取組では経営の主体を若者に委譲。メニューの決め方や営業時間など、運営面を若者たちが決めるという。
キャリア解放区は和僑ホールディングスとフランチャイズ契約し、店舗オーナーとなる。若者はオーナーと業務委託契約を結んで働き、売上から家賃や改装費、仕入れ費などの固定費を引いた額を利益とし、働いている人たちでシェアする仕組みだ。納富氏は、
「飲食店に人が集まらないのは低賃金・長時間労働だけが問題なのか。管理されることが嫌なのではないか。働き方に対するアンチテーゼ、仮説をもって取り組んで、若者がどれだけ主体的に動いてくれるか実験としてチャレンジしたい」
と語っていた。
和僑ホールディングスの高取会長も、プロジェクトを「大きな社会実験」だと語る。
「彼らがノウハウを継承し、人を使うことを覚え、労働環境が出来上がる仕組みを現場で学ぶことが重要ではないかと思った。一事業家として第一歩を歩める施設を作りたかった」
18歳から屋台を始めて会社を発展させた高取代表は、自身やニートたちを「日の当たらないところの住人」と表現し、
「(日の当たらないところの住人は)持っている人たちからいかに金銭を奪うか、様々な手段を考える。僕にとってはそれがたまたま1本の焼き鳥やラーメンだった。飲食は持っていない人が持っている人から奪うための一番ちゃんとした方法。彼らも学んでもらえれば、十分、我々よりもお金持ちになれる」
と可能性をアピールした。
元フリーター「そんな簡単に稼げるわけはないと思いつつ騙されたつもりで参加した」
店舗では現在、2人の若者が働く。配膳や調理を行う内村瞳さん(24歳)は、22歳で服飾系の大学を卒業後、舞台衣装のアシスタントなどを経験していた。しかし、負担の大きさから心身が追いつかなくなり退職した後は、「自宅で細々と働いてはいたものの、家に籠りがち」だったという。友人から誘われて参加したアウトロー採用でプロジェクトを知り、「飲食店の経営をリスクなしで学べるなら良い機会だ」と思いチャレンジを決めたそうだ。
「将来お金がたまったら、お菓子作りが好きなのでカフェを開きたいです。今の店舗でも、コースの最後にちょっとしたデザートを出すなど、工夫が出来るかなと思っています。学んだことを生かし、店舗のユニフォームも作ってみたいです」
焼き鳥の調理を担当する渡邊竜成さん(24歳)は、大学在学中に就活をせず、「気づいたら卒業していた」若者だ。今回のプロジェクトには「そんな簡単に稼げるわけはないだろうと思いつつも、騙されたつもりで参加している」という。
参加したのは、「就職と違い、稼ぐという目的がわかりやすかった」ため。理想の働き方は、「不労所得で暮らし、暇になったら太陽の下でちょっと身体を動かす仕事をする」ことだという。「ここでお金を貯めて不動産を買って、不労所得を得てたまに働く。あ、今夢が出来ました」とも話していた。
2人のほかに、2人の若者が現在本部で研修中だという。うち1人は全く働いたことのない男性で、職業訓練校とこのプロジェクトで迷った後、プロジェクトの参加を決めたそうだ。
納富氏は、「若者たちがここを介して世の中に出ていくモデルが出来れば。新しいロールモデルを発信できればと思います」と意気込みを語っていた。