弁護士や研究者、スクショNGに緊急声明「立法措置の検討には慎重な議論が必要」
文化庁の文化審議会著作権分科会は2月上旬、違法ダウンロードの対象範囲を音楽・映像だけでなく、小説や雑誌、論文など著作物全般に広げる方針を固めた。分科会は、権利者の許可なくネットにアップされたこれらのコンテンツを、私的利用目的でスクリーンショットした場合も違法になると判断。著作権法の改正案をまとめ、通常国会に提出する予定だ。
分科会の方針には、「インターネット利用が萎縮する」など、強い反対の声も出ている。知的財産法の研究者や弁護士などは2月19日、共同声明として、政府の見直しに対する緊急声明を発表。「ダウンロード違法化の対象範囲について、立法措置を図るに際しては、さらに慎重な議論を重ねることが必要である」との立場を表明した。
「著作権制度の妥当性について国民の信頼を失わせかねない」
声明は、明治大学知的財産法政策研究所の高倉成男所長、東大の中山信弘名誉教授、明治大学法学部の金子敏哉准教授らの3人が呼びかけた。賛同者には、東京大学先端科学技術研究センターの玉井克哉教授や山口貴士弁護士ら84人と、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンが名を連ねる。
声明では、文化審議会でのダウンロード違法化の対象範囲の見直しが「異例のスピード」で行われたと指摘。その上で、
「クリエーターやネットユーザー等からの新たな懸念の声が生じており、法改正の前提となる立法事実、法改正が国民生活に及ぼす影響については、いまだ十分な検討がされているとはいえない」
と批判した。対象範囲の拡大は私的な情報収集の萎縮をもたらすだけでなく、「著作権制度の妥当性について国民の信頼を失わせるものともなりかねない」と危惧している。
また、法改正については「あくまで被害が深刻な海賊版への対策に必要な範囲に限定されるべき」とも主張。
「民事的規制・刑事罰ともに、『原作のまま』及び『著作権者の利益が不当に害される場合に限る』との要件を定めることが必要であり、刑事罰についてはさらに悪質な行為に限定する等の謙抑的な対応が求められる」
と、国民の自由が行き過ぎた制約を受けないよう配慮すべきとの考えを示した。