正社員の賃金、約6割の企業「改善する見込み」 業界別では「建設」「製造」「運輸」で顕著
帝国データバンクは2月14日、「2019年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果を発表した。調査は、今年1月18日~31日の間、全国の2万3035社を対象に実施。そのうち9856社から回答を得た。
正社員に対して、「賃金を改善する見込みがある」と答えた企業は55.5%で、3年連続で50%を超えた。賃金改善の具体的内容には、「ベースアップ」が45.6%で最も多く、3年連続で4割台で推移している。「賞与(一時金)」が30.3%だった。
「残業なしでも日頃の生活を送れるよう、会社として賃金引き上げを意識している」
2019年度に賃金改善の見込みが「ある」と答えた企業を業種別に見ると、「建設」が60.0%で最も高く、「製造」(59.2%)、「運輸・倉庫」(58.0%)が続いた。一方、「金融」は29.6%で最も低かった。
従業員規模別では「21?50人」(61.8%)、「51~100人」(61.0%)では6割に達しているが、「5人以下」(38.9%)や「1000人超」(30.2%)では3割台にとどまる。中小企業で賃金改善が進んでいるようだ。
賃金改善が「ある」と回答した企業に理由を聞くと、「労働力の定着・確保」が80.4%と、2015年度の調査以来、5年連続で前年の回答率を上回った。人材不足感が強まる中で、定着と確保を意図して賃上げを行う傾向が強まっている。次いで、「自社の業績拡大」(40.9%)が挙がった。
対して改善は「ない」と答えた企業からは、「自社の業績低迷」(52.6%)、「人的投資の増強」(22.0%)といった理由が寄せられた。
賃金改善が「ある」と答えた企業からは、
「残業なしでも日頃の生活を送れるよう、会社として賃金引き上げを意識している」(配管冷暖房装置等卸売、神奈川県)
「人材確保の上でも、永年会社に貢献したことに対しても、賃金はわずかであっても上昇させたい」(燃料小売、北海道)
といったコメントが挙がった。一方で「ない」と回答した企業からは、「収益を上げないと賃金は上昇しないのが道理」(寝具製造、京都府)など、苦しい胸の内ががうかがえる。