クロ現「転勤をなくす」試みが転勤族の共感呼ぶ 武田アナ、4度の転勤経て「今となっては妻に申し訳なかった」
労働政策研究・研修機構の調査(2017)によると、最も転勤が多いのは30代、次に40代で、ちょうど結婚や子育てで忙しい時期だ。「できれば転勤はしたくない」と考える人はおよそ4割、「転勤は家族に与える負担が大きい」と考える人は8割を超える。配偶者の転勤で退職する正社員も3割以上で、夫の転勤で妻が退職を余儀なくされるケースは少なくない。
番組では、転勤族の夫を持つSさんが登場。これまで3度の転勤を経験し、フルタイムの職に就くことはできないという。長男は環境の変化によるストレスから視力が突然悪化し、Sさんは「引っ越すことでどれだけ負担がかかっているのか、怖いです」と不安げな様子だった。
司会の武田真一アナウンサーも、妻が仕事を止め、4度の転勤についてきてくれたことを明かし、
「私の転勤で妻が仕事を辞めざるを得ないということになったことには、本当に今となっては申し訳なかったなというふうに思います」
と語った。若い頃は、妻が辞めてついてくるのが当然という認識だっただろうし、今でもそういった構図は日本社会の中にある。
「日本の場合だと、権限を全部握られてしまっている」
そんな中、全国に200の拠点を持つAIG損害保険は、この4月から原則「社員の希望しない転勤」をなくすという。全国11のエリアから希望を出してもらう仕組みで、希望通り鹿児島に異動となった男性はガッツポーズ。一方、東京・大阪に希望が集中し、地方のポストが埋まらないと人事が頭を抱える場面もあった。それでも、地域採用や人材育成をして2年半かけて全員の希望をかなえるとしている。
こうした動きは他の企業でもあり、キリンは結婚・出産・育児などの時期、転勤を最大5年間猶予する。サントリーは5~10年先の勤務地や職種を上司と毎年相談するなど、社員の希望を採り入れる制度が始まっている。また、金融系の企業が提携し、妻の待遇を変えずに提携企業内で仕事をスライドさせるという取り組みも。銀行に勤めていて証券会社に移動した女性は、上司にフォローしてもらいながら生き生きと働いていた。
「サイボウズ」社長の青野慶久氏は、自社でも、希望しない転勤はさせないし、どうしてもそこで働く人がいなければ営業所を諦めるのだという。
青野氏は日本の雇用形態について、「一度会社に入ればどこでどう働くかの権限をすべて上司が握る『メンバーシップ型』」だと解説。しかしほとんどの国では「ジョブ型雇用」で、採用される時点でどこでどんな仕事をするのか決める。なので、転勤と言われた時点で再びサラリーから見直す交渉が始まると説明した。その上で、
「日本の場合だと、権限を全部握られてしまっていると。やっぱり、ここを変えていかないといけないと思いますね」
と提言した。
転勤族らしき視聴者からはツイッターで共感や辛さを訴える声が上がった。住む場所、働く場所が選べないのは横暴だという指摘もある。キャリアが積めず悔しい思いを語る妻もいた。家族に大きな負担を強いる面がある転勤について、考え直す時期に来ているようだ。