パチンコホールは名目上遊技施設となっているが、その実はお金のやり取りが発生しているギャンブル施設である。そのために、訪れる客の中には借金まみれであったり、借金はなくとも、生活のためのお金を注ぎ込んでしまう人が一定数いる。
こうした客の足元を見るかのように、サラ金全盛の時代なんかは、わざとパチンコホールの周辺に無人契約機を設置する状況がそこかしこで見られた。さすがに最近ではそこまで露骨なこともなくなったが、一歩ホールに足を踏み入れると、まだまだこの「露骨」の息の根は止まっちゃいないことを感じさせられる。
政府が今月19日に閣議決定したギャンブル依存症対策の基本計画の中に、パチンコ店内ATMの撤去の一文が盛り込まれたという。
パチンコホールにATMが設置されるようになって今年で12年になる。日本では現在、全国1000店舗ほどのパチンコホールで店内に設置されている。つまり、利用客がもしも財布の中身を全部スッてしまっても、店内で追加の預金を崩してギャンブル続行が可能だ。当然こういったATMが店内にあったことで、余計に負けてしまう客も大勢いたことだろう。
そしてこの店内ATMがまかり通ってきた名目がまた何とも胡散臭かった。「これは依存症対策が施されているのでセーフ」という見解があったのだ。
その根拠はこうだ。店内のATMは出金制限機能が有されており、1日に3万円、月額でも8万円までしか下ろせない。これが依存症を増やさないための対策の根拠だったのだから笑えない。何かの冗談だったのだろうか?
僕もパチンコをやるが、少なくとも利用客の反応は全く逆だ。「財布にお金なくても、3万までならまだ勝負できる」というますます焦げ付く依存者の温床でしかなかった。
庶民的な遊技場への回帰こそパチンコホールが生き残るために必要な舵取り
パチンコホールに設置されているATMなんて、利用しているのはもう見るからに悲壮なオーラを漂わせた”その日の負け組”たちである。僕は幸運にも使ったことはないけど、利用者の背中は毎度目にする。怒っているかのような、泣いているかのような、酷い背中だ。そんな背中の持ち主ばかり。「3万の出金限度額」が設定されているなんて言われても「だから何?」といったところだ。
パチンコ業界がこの先も生き延びるためには、従来のような30兆円産業規模を維持するなんてことは、もうできない。喫煙者対策と依存症対策。この両輪を意識しない限り先はないし、そもそも今の若い世代はパチンコをしない。店内ATMの撤去は本当に良い流れだと思う。
テレビでは「パチンコって地域に貢献してますよ」みたいな作りのCMが未だに流れているが、あんなのは幻想。まやかし。嘘でしかない。パチンコホールでは毎日大勢の客が負けていて、そのおかげで成り立っている。
そんな業界が健全と言えるかと問われて、誰が「はい」と返事できるんだろう。旧来の、庶民的なちょっとした博打感覚の遊技場へ回帰することこそ、この先もパチンコホールが生き残るために必要な舵取りではないだろうか。実際、今パチンコホールにお金を落とす世代の多くは高齢者。彼らは向こう20年で激減するわけだし。
喫煙者対策、遊技機のスペック見直し、そしてATMの撤去についての検討と、少しずつ外堀が埋まってきた。後は本丸の、三店方式での換金にさえ切り込めば、本当の意味で古き良き庶民のパチンコが戻ってくる。