トリアージでは搬送の優先順位順に赤、黄、緑、黒の4種類の識別色がある。医師や救急救命士がバイタルの安定度合いなどから該当色を判断し、タッグを付ける。一人あたりにかける時間は数十秒から数分程度で、一度色が判断されても、状況に応じて複数回行われる。
東京都福祉保健局によると、赤は気道閉塞や呼吸困難、多量の出血などが該当する。黄色は「多少治療の時間が遅れても、生命には危険がない」と判断される状態の人に付けられる。脊椎損傷などが該当する。
緑は赤や黄に該当しない軽度な傷病で、脱臼や打撲など、専門医の治療を必要としない人、黒は、気道を確保しても呼吸がない人や、既に死亡している、あるいは明らかに即死状態だと判断される人に付けられる。
川崎消防局によると、今回の事件では災害時に派遣される医療チーム「川崎DMAT」が派遣された。トリアージはDMATの医師立ち会いの元で行われ、黒が2人、赤が4人だったという。黒と判断されたのは30代男性と小学6年生の女児、赤は小学生の女児2人と40代の女性、50代男性だったという。
東日本大震災時のトリアージでは判断の適切性めぐり訴訟に
一人でも多くの人を救うためのトリアージだが、課題も指摘されている。東京都では2008年の秋葉原通り魔事件の際、災害以外で初めてトリアージが行われた。当時現場で黒と判断された5人は赤の人に続いて搬送されたが、全員死亡が確認されている。このため、現場での黒タッグの判断が適切だったのかという指摘も出ていた。
東京消防庁はその後の報告で、「本事案でトリアージをしなかった場合、搬送の優先順位が曖昧になり、助かる命が助からなかった可能性はあった」として、実施や判断は適切だったという認識を示している。
また、東日本大震災時に搬送先の病院で亡くなった95歳女性の遺族は、病院のトリアージ判断を巡って、約3220万円の損害賠償を求め提訴している。
女性は震災発生から3日後、津波で水没した自宅で救助された。女性は震災前、日常生活が困難である「要介護5」の認定を受けていたが、搬送先の病院はトリアージで女性を緑、軽症だと判断。女性は17日に脱水症で亡くなった。今年1月の口頭弁論で病院側は、争う姿勢を見せている。