本場のフランス料理がマズくなっている!? その理由と対策は…
世界一の観光大国、フランス。ここを訪れる観光客の楽しみのひとつは「本場のフランス料理」だが、パリの街ではこんな声が聞かれる。
「昔はどこの店に入っても美味しかったが、今は探さないとない」
現地のフランス料理がまずくなっている、という声があるのだ。2015年2月16日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、危機に瀕するフランス料理界の現在と、そこに関わる日本人たちを紹介した。
多くの店がレトルト使用。低賃金・長時間労働…
まずくなっている理由は、多くの店が冷凍食品やレトルトを使用していることだ。フランス人の父を持つ番組ゲストのイザベルさんも、日本から連れていった友人とフランスで食事した際、「えっこれがフレンチなの? と言われちゃって」と証言する。
観光に影響を与えかねない問題に、政府も対策に乗り出した。去年7月から、店が素材から調理していることを証明する「ホームメイド認証マーク」を導入、店の看板に掲げるよう指示した。客にも「安心して入れる」と好評だ。
それでもフランスのレストラン13万5千店中、85%が冷凍食品やレトルトを使用しているという。「深刻な人手不足」で、増え続ける観光客をさばききれないからだ。
さらに飲食業界は低賃金・長時間労働の「職人の世界」で、若者はきつい仕事を敬遠しがちだ。どの程度なのかは分からないが、日本の状況にも似ているかもしれない。
そんなフランス料理店には、店の大小を問わず多くの日本人シェフが働いている。新人、ベテランを問わず、本場フランスで修業したいとやってくるのだ。
東京・本郷にある「エンジン」は、料理人の海外就業をサポートする会社だ。社長の喜多正顕さんは、海外で働きたいという料理人が増えたことに目をつけ、5年前このビジネスを始めた。
「料理の基本ができている」と受け入れ店も喜ぶ
喜多社長には、厳しい現実に打ちのめされる日本人の若者を救いたい思いもある。
「ビザだけとって、勤め先はフランスに行けば何とかなると思っている人が多いですが、実際は働く先がなくてお金が尽きて帰ってくる人も多い。知り合いのコネで行ったけれど、劣悪な環境で騙されて帰ってくる人もいるのです」
これまで200人以上を海外に送り出しており、三ツ星レストランから小さなビストロまで希望にあった店を斡旋している。少しでも失敗が減るよう、準備期間は1年。ビザの申請代行や住居の手配、語学研修までサポートする。
修行したい日本の若者が、一方的に押しかけるだけではない。一流レストランで腕を磨いてきた坂口究水さん(35歳)は、シェフ歴10年のベテランだ。
「こういう楽しそうな感じのビストロがやりたかった」と、希望通りパリの小さなビストロに就職し、満足そうだ。オーナーシェフのパトリスさんも喜んでいる。
「彼は料理の基本ができているから、助かっているよ。誰が来てもいいってわけじゃない。即戦力になる人が欲しいからエンジンにお願いしたんだ」
ナビゲーターの山口義行氏(立教大学経済学部教授)は、「低賃金や長時間労働に耐える、という事ではなく秘伝の味や技術を手にする。学びながらお金をもらうという考え方」と解説した。
夏野氏は「頼もしいね! 今の若者は」と称賛
番組では、日本のラーメン屋や寿司、お好み焼き屋がパリでも人気で、フランスの若者が働いている様子も映し出した。この状況を、ゲストでドワンゴ取締役の夏野剛氏は、
「経済学で言うと『競争優位』ということ。つまりフランス人でラーメンが作れる人は少ない。希少価値が出るから自分で開業するチャンスは大きくなる。同じように、フランスの本場で修業した日本人は圧倒的に少ない。『競争優位』が持てることをちゃんとやっている」
と解説し、「頼もしいね! 今の若者は」と笑いながら締めくくった。
将来のために頑張る若者たちを利用し、低賃金で使うという見方もあると思うが、そこには希望もある。綿密な準備と計画の上で渡航するなら益するところは大きいだろう。
日本も飲食業に限らず、若い人材不足で東南アジアなどから若者が働きに来ることを考えて、行く人も来る人も悪い大人に潰されないよう本当に良い修業ができるといいと感じた。(ライター:okei)
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