『ESSE』は、扶桑社が発行している主婦向け月刊ライフスタイル誌。雑誌では、レシピを中心に収納術などの家事の技を紹介している。主に30~40代女性をターゲットに、家事の手間を無理のない範囲で減らしたいという主婦層に向けたコンテンツを提供している。
一方、今回の記事に寄せられたのは「自分の住んでいる地域はここまで食材が安くない」といった批判だ。記事で紹介されている主婦は、岡山県倉敷市在住で「キャベツ一玉57円」「若どりむね肉100g 47円」といった写真が掲載されていることから、確かに首都圏とは物価がかけ離れているように思える。
だが、ネット上の反発の多くを占めたのは、
「夫(家族)から”もっと節約できないのか”と言われる」
という声だ。主婦らの「こういう記事が出るから、もっと節約しろという圧力が高まる」といった怒りを買った形と言える。言い換えれば、主婦らが各家庭で常に食費を減らすように求められていることが顕在化した表れだろう。
「月2万円台でもやっていける」と言っているような記事の内容は、確かに「すでにできる範囲での節約はやっている」という主婦の言い分を否定するようなものだ。実際に、主婦たちからは
「自分も働いているのに、これ以上節約するのは無理」
「夫から渡される食費が削られるのではないか」
と不安視する声が多く挙がっていた。
「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」が話題になった直後で……
また、少し前の7月8日には、スーパーの惣菜コーナーで、子連れ女性が「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と高齢男性に言われていた、というツイッターの投稿がテレビでも取り上げられるほどの注目を集めた。
「料理や家事は女性の仕事」とする男性へのヘイトが高まったタイミングで「月2万円台節約」の記事が出てしまったことも、ネットの空気感にそぐわなかったと言えるのではないだろうか。
特に、共働きの家庭の家事の分担は、定期的にネット上で話題になる。また、新型コロナウイルスにより、家庭環境が一変したことも一因と言えるかもしれない。
はてな匿名ダイアリーにも7月22日、「コロナのせいで家庭内リストラされそう」という記事が投稿され、40代女性が職場に出社せざるを得ない職種で夫が在宅勤務になり、家事も一手に引き受けるようになって「私はこの家庭に居場所がない」となった思いが綴られている。
性別に関わらず、家事や子育てをすることが偏るとモヤモヤがたまるという好例だが、その不満や不安がネットによって煽られているという状況には気を付けた方がいいだろう。
ある意味では核家族の限界とも取れるし、ポテトサラダの件では世代間の意識のズレが表面化しているとも取れる。本来は一番の味方であるはずの家族を頼ることができない人に対して、どのような発信をすればいいのか、メディア側も考慮する必要があるだろう。