7000万の赤字から社員数150人の成長企業に! 新規事業を成長させるために必要なたったひとつの戦略 | キャリコネニュース - Page 2
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7000万の赤字から社員数150人の成長企業に! 新規事業を成長させるために必要なたったひとつの戦略

——さまざまな事業を立ち上げてこられたなかで、吉岡さんの仕事観にもっとも影響しているのは何ですか?

1 年間で 7,000 万円の赤字を出して撤退したクラウドの POS レジ事業ですね。

当時の背景をいうと、「保険の窓口」のインターネット版のような保険のマッチング事業を立ち上げて 1 年半で月 3000 万の売上を達成し、創業事業の SEO でも順調に伸びていました。ところが 2012 年以降、Google のアルゴリズム複雑化で、SEO 事業で苦戦をしいられ、2 本目の事業の柱になりつつあった保険事業からも情報漏えいの事故を起こしてしまい、撤退せざるを得ない状況に。これでは安定成長が難しいと、ウィルゲートとして新たな事業を立ち上げることになったんです。その時チャレンジしたなかの1つが、クラウドの POS レジ事業でした。

O2O 市場は「何兆円市場だ」「必ず伸びる」「やるべきだ」とかってことを、シンクタンクやあちこちでいわれていました。このチャンスを逃さないためにも、どこよりもはやく事業化しようと、5,000 万円かけて既成品の POS レジのシステムのライセンスを取得もして、エンジニアも入れて、勢いよくスタートした。ところが、いざ営業し始めると、まったく売れなかったんです。

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—— 商機があるといわれていた市場で、なぜ売れなかったんですか。

顧客の声を直接聞かずに机上の空論で事業を企画してしまったからです。僕たちのプロダクトは、既存のレジより高機能だしコストも安い。でも現場が新システムの導入に猛反対したんです。それに競合するのは老舗の大手メーカー。企業の根幹である在庫を扱うシステムを任せるには、新規参入の僕たちには実績も信頼がないともいわれました。そもそもレジは5年など長期リース契約が主流で、営業にいっても「契約更新したところだから5年後に」なんていわれて、検討すらしてもらえないこともありました。

プロダクトを作るより前に、先にお客様に会って「こういうプロダクトあったら使いたいか」「導入の際に何がネックか」というテストマーケティングが非常に甘かった。新規事業の“あるある”だけれど机上の空論でした。それに過去 10 種類以上の新規事業にチャレンジして成功確率が高かったのでので「自分たちならできる」「営業が得意だ」というおごりもあったかなと思います。

成功した事業は既存市場への後追い参入だったから、既にビジネスモデルが確立していたんですね。でも POS レジ事業は、成功するかどうかもわからない未知の領域。そこへいちばんに乗り込んで、グッとアクセルを踏んでしまったという感じ。ほんとうに顧客理解が浅かったんです。

結果的に立ち上げ1年でシステムのライセンス料とエンジニアや営業の人件費で合計 7,000 万円の赤字を出しました。以来、新規事業をする際には顧客に徹底的にヒアリングをします。月並みですが、お客様の悩み、競合分析、差別化はどこか、自社の資産も考えて 3C 分析をしっかり行うおかげで“新規事業で勝てる”という精度は高まりました。

「母の同級生を紹介してもらうこともあります(笑)」手段を選ばずに取り組むこと

—— では優秀な営業の要素でいえば、やはり顧客理解、ヒアリングがいちばん大事ですか。

そういう視点なら、ヒアリングだけでは足りません。お客様の悩みを理解して、具体的な解決策を提示することが重要。そこまでできる人は少ないと思います。ちなみに解決策は自社プロダクトでなくてもいいんです。

たとえば、営業にいった先で仕事に関係なくても、新卒採用に悩んでいると聞けば、自分の信頼する新卒採用のパートナーも紹介します。とにかくお客様の課題に役立てばいい。僕は平均月間2〜300 人の人に会います。ほとんどが経営者層なので、アライアンス先や営業先の紹介をよく頼まれる。だから間に入ってつなげることもよくあります。

基本的な僕の考えは、誰かを幸せにし続けていけば……というペイフォワード。あの時吉岡に紹介してもらって儲かったから、その利益でこの案件をウィルゲートにお願いしようとか、そうなっていくものなんですね。

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—— 吉岡さんの人脈はかなり特別だと思います。キャリアの浅い若い人には、なかなかそこまでのネットワークはなさそうですが……。

僕のネットワーク自体もウィルゲートの資産。私をコマの1つとしてどんどん使っていいとメンバーには伝えています。できるメンバーは僕に限らず、社内の誰が何を得意かよく知っていて “いい感じに” 人に頼りまくってお客様の課題を解決していますよ。自分ひとりでできることは少ないと理解しているんですね。

—— 吉岡さん自身が誰かに頼ることもあるんですか。

ありますよ。友人の友人をつたって紹介してもらうことも。ときには私の母に依頼して、学生時代の同級生を紹介してもらうこともあります(笑)。すべてを使って目的を達成していくという気概が新規事業でも大切です。

まず自分の「ファン」になってもらう。いずれ縁がつながるときが来るから

—— 吉岡さんがふだん人との出会いで気をつけていることはありますか。

1〜2分で自分や会社のことをしっかりわかってもらえるような自己紹介、会社紹介を心がけています。エレベータープレゼンみたいな感じですね。必要最低限、自分のことを伝えた後は「相手の理解」に努めます。ビジネスモデルやその方の役割やミッション、何に時間を割いていて、何に困っているかです。

営業だと自社の商品のことしか話さない人が多いと思けれど、営業とは「ファンづくり」です。自社プロダクトのよさだけではなくて、まず会社や自分のファンになってもらうことです。ファンになってもらうためには、「ペイフォワード」で相手の役に立つことですね。 採用活動で感じるのは、面接に落ちると“さようなら”という求職者や企業がむちゃくちゃ多い。せっかく面接を通じて数回お会いしたのであれば僕は仮にウィルゲートでいっしょに働けなくても、Facebook などでつながり続けます。うちを検討しているなら、近い業界の会社に就く可能性も高い。今後も縁がつながるかもしれません。

実際私個人でビズリーチを使って採用したのは数人ですが、受注はその数倍あるんです。仕事をとってやろうと思ったわけではないですよ(笑)。僕やウィルゲートのファンになってもらった結果、他社に就職されてから、ウィルゲートに仕事の相談を持ちかけてくれるんですね。

—— 新規事業を立ち上げて、成長させるには何が大切になるのでしょうか?

判断の精度やスピードが早いことではないかなと思います。どのベンチャーも戦略は似てくるので、選ばれるにはスピードが必要。そこに関しては、うちはすばやく意思決定して事業の軌道修正ができるので勝てるのだと思っています。

いちばん伸びているライターのプラットフォーム事業『サグーワークス』は後発参入ですが、お客様の声を聞いていちはやくプロダクトに反映するサイクルができているので、競合よりも先んじて新サービスをリリースできています。この判断が遅れると年間で億単位の損失が出てしまいます。適切な判断が競合より早くできた結果、『サグーワークス』という事業は高い成長率を維持できていると思います。

描いた戦略を、いかにはやく実現するかには、仲間づくりが最重要です。だからこそ“ファンづくり”であり、いかに人とつながるかなんです。優秀な営業やエンジニアがいれば、事業の成長スピードが早まるのは自明ですよね。結局、そういう優秀な人を自分が連れてこれるか。いずれ事業責任者を目指すのであれば、“ファンづくり”ができるかはなおさら重要ですね。

事業フェーズでいうと“パー”の時期。どんどん新しい事業にチャレンジしていく

—— 最近は、出版社との事業提携などもされて、事業分野がさらにひろがっていますね。

創業時のイメージでウィルゲートは SEO の営業会社だと思われがちですが、ずいぶん仕組み化が進み、社員 150 名中新規営業は 8 人ほどです。また、創業事業の SEO 事業の売上構成比は 50%くらいです。『サグーワークス』や SEO の AI ツールをリリースしたり、出版社も主婦の友社さんに加えて、小学館さんや KADOKAWA さんと事業提携をして、事業分野は広がっています。基盤があるなかで新規事業にどんどんチャレンジできたことで、いまのような形に整いました。

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—— まだまだ、これからも新しいチャレンジは続いていくのでしょうか。

出資も頂いているリンクアンドモチベーションさんの受け売りですが、ベンチャーの成長は“グーパーチョキ”だと思うんです。創業直後は“グー”の時期、一点突破で突き抜ける。その後、儲かった資金や顧客資産、社員のリソースを使って“パー”の時期、いろんな方向へ新規事業を展開する。そして、「やばい、展開しすぎたから選択と集中だ」という時期がくると“チョキ”、つまり事業の数を絞って集中する。ウィルゲートはいま“チョキ”の時期が終わったところ。もう一度、手を“パー”に広げて、いろんな事業にチャレンジし、拡大していこうという事業フェーズにあるんです。

本当に顧客のニーズを理解したうえで、事業化までできる人は少ないと思っています。よく思うのは、「作られたものを売るだけならできる人は多い」。でもそれでは、ビジネスマンのグレードとしてはどうか。営業職は顧客や社外の方との出会いも多い。顧客の声を引き出し、既存プロダクトの改良や新規事業を立ち上げる。ファンを作り、採用に繋げる。そういった人財が引っ張りだこになると思います。頭が切れる若手は営業経験を避けてマーケティングや事業開発の経験をしたがる傾向にあると思いますが、将来本当に事業を立ち上げたいのであれば大なり小なり営業経験は必須だと思います。

社内には、創業時に営業でキャリアを積んでいたメンバーが、マーケティングやコンサルティング、事業の責任者に成長しています。こうした社員資産や信頼を築いてきた顧客資産を基盤に、あらためて新たな事業にチャレンジしていきたいと思っています。

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