「俺が経済的に支えるよ」「子育て優先じゃないの?」 シングルマザーへの偏見が生む周囲の歪んだ恋愛イメージ
離婚や死別、未婚など事情はさまざまながら、夫を持たずに我が子を育てる「シングルマザー」が増えている。厚生労働省が昨年発表したデータによると、児童のいる世帯で母子のみの家庭の割合は約6.8%(2012年)にのぼるそうだ。
最近は幼い子を連れての再出発となる女性も多く、周囲から父親と母親の二役をひとりでこなす苦労を慮られ、逆に色々と言われることもある。そのひとつが「恋愛」だ。シングルマザーを取り巻く恋愛事情を聞いた。(取材・文:千葉こころ)
実情を知らないのに「子どもがかわいそう」という風潮にうんざり
「いろいろ事件もあるせいか、『シングルマザーは恋愛すると育児を放棄する』みたいなイメージがあるのはつらいです」
保育園に通う息子を育てるシングルマザーの曳地由加里さん(仮名・32歳)は語る。離婚してから2年後に現在の彼と知り合い、交際へと発展。由加里さんの状況を考慮して、子どもを優先したお付き合いが続いているそうだ。
「週末は子どもの喜びそうなところへ3人で出かけます。ふたりの時間は子どもが寝てからとれるので、『子どものせいで』という気持ちもありません。なにより、父親のような兄のような存在ができて喜んでいる息子の姿をみていると、嬉しくなります」
順調に愛を育む由加里さんだが、周囲の目には悩まされたという。
「彼との交際を知った職場の先輩が、『今はいちばん母親の愛情が必要なときなのに、大丈夫なの?』と言ってきたんです。『まだ若いから気持ちもわかるけど、母親なんだから』って」
母親が恋愛をすると子どもに注がれる愛情が半減するかのような言いぐさに、由加里さんはショックを受けたとのこと。
「彼がいても、子どもへの愛情は変わりません。子どもを置いて遊びに行ったり、邪魔者扱いしたりすることもありません。それどころか、彼がいることで気持ちにメリハリがついて、穏やかな生活を送れるようになったんです。子どもの笑顔も増えました。それなのに、『恋愛よりも子育て』『子どもがかわいそう』という風潮が強く、まるで悪いことをしているような言われようです」
子どもと彼との相性や、子育てと恋愛のバランスを見誤らなければ、シングルマザーの恋愛はプラスになるという由加里さん。「先入観でタブー視するより、ふたりの関係性を見極めたうえで見守っていただけると嬉しいです」と語っていた。
高価なプレゼントと貯金をチラつかせる上司に屈辱感
一方で「独身」であっても子どもがいる、という立場から、男性のアプローチに悩まされるシングルマザーもいる。小学生2人を育てる五十嵐彩さん(仮名・36歳)は、「職場の上司に困惑しています」と語る。
彩さんと同い年の子を元妻が引き取ったというバツイチの上司は、面会前などに「何が流行り?」「どこへ行くと喜ぶ?」など、よく相談してきたという。ときには『お礼』として、子どもへのお土産をくれることも。
「そんなある日、『子どもとディズニーランドへ行くんだけど、一緒にどう?』と誘われたんです。『全額出すから』と」
子どもたちは憧れているものの、経済的な事情で連れて行けずにいる場所。とはいえ、上司の面会に同席するのも、全額出してもらうのもおかしいからと彩さんは辞退。すると、その後は何かと理由をつけて、プレゼントをしてくるようになったそうだ。
「はじめは『当たった』という理由でビールひと箱でした。『いつも頑張ってるから、たまには息抜きして』と。その後、『余ったから』と2万円のガソリン券、私の誕生日や入社1周年記念などと称してアクセサリーやブランドの小銭入れなど、どんどん高価なものになっていきました」
丁重に断ってもむりやりカバンに入れられるなどプレゼント攻防が続き、ついに彩さんは「困ります」と直訴。すると上司から返ってきたのは、思いもよらない言葉だった。
「女手一つで育ち盛り2人を養うのは大変でしょ。それに、キレイなんだからもっと自分を大切にしなきゃ。俺は1000万円近く貯金があるから大丈夫。3人を受け入れる準備はできているから、いつでも甘えてくれていいんだよ』
これには彩さんも動揺。「経済的に苦しいのは確かですが、そのために男性を必要とするつもりは一切ありません。お金でなびくと思われていたような、すごく屈辱的な気分になりました」と語っていた。
子どもがいても、ひとりの女性であることに変わりはない。シングルマザーの恋愛は再婚へのステップともなるだけに、偏見のない周囲の理解が望まれる。
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