東京の「ランチ難民」を救うベンチャー IT駆使し超速の「弁当宅配システム」で届ける
社員食堂のないオフィスに勤める200人に、テレビ東京がアンケート調査をおこなったところ、「昼の休憩時間にランチを食べられないことがある」と答えた人は38%にのぼった。
昼時のオフィス街では、食堂やレストランは長蛇の列。コンビニのレジ待ちも相当な列で、忙しい合間を縫っての昼食は、ビジネスマンにとって頭の痛い問題だ。2015年4月14日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、そんなランチ問題を解決する新しいランチビジネスの姿を追った。
昼食抜きの経験から「手軽なランチ」効率的に届ける
東京・渋谷区のマンションの一室にある、社員3人の「ベントー・ドット・ジェーピー」は、1個からでも届ける弁当の宅配サービスを行っている。スマホのアプリで簡単に注文でき、配送料込みで800円の弁当が平均10分で届く。利用者はあらかじめ登録しておく必要があるが、「安いし頼みやすい。ものすごく速い」と好評だ。
2014年4月に起業した社長の小林篤昌さん(28歳)は、もともとゲームソフトを開発する会社で働いていたが、このサービスを開始した思いをこう明かす。
「(仕事が多忙で外に行く時間がなく)昼食を抜かないといけないという経験が多かった。ある程度満足して食べられるランチが、もっと手軽に届けばいいなと思いました」
速さと安さの秘密は、徹底した合理化だ。午前10時、外注した弁当およそ100個が事務所に届く。1日1種類にすることでコストを抑え、配達の効率も上げている。アルバイトが自転車で弁当を運び、それぞれ担当エリアで待機する。配達エリアは、渋谷駅と六本木ヒルズの周辺に限定している。
正午には本社へ続々と注文が入り、客の近くで待機する配達員のスマホに情報が送られる。抜け道裏道を熟知したバイトの青年は、5分ほどで配達できた。配達員ごとの弁当の残数も本社でリアルタイムに管理し、数が足りなければスマホのGPSで位置確認をして近くの配達員から弁当を補充する。いちいち本社に戻らなくても在庫の補充ができるのだ。
起業のきっかけは「不規則な食生活で体を壊した経験」
ベントー・ドット・ジェーピーは、このサービスを始めて1年で、1万5000人の登録者を獲得。3つの弁当屋と提携し、年間100種類以上を販売するなど飽きさせない工夫も怠らない。有名店のコーヒーデリバリーも開始し、さらに波に乗る。
「社員食堂を作りたいがハードルが高い」という会社のオフィス内で、煮物やハンバーグなどの惣菜を手軽に食べられる「オフィスおかん」というサービスを始めたベンチャー企業もある。
利用する会社が専用の冷蔵庫を無償レンタルし、毎月、惣菜の数に応じた費用をまとめて払う。社員はひとつ100~200円で購入でき、電子レンジで温めるだけ。運営するのは東京・代々木にある社員5人の「株式会社おかん」だ。
社長の沢木恵太さん(29歳)は、もともとコンサルティング会社に勤めていたが、不規則な食生活で体を壊した経験から2013年に起業した。「そもそも僕が欲しかったサービスです」と明かす。現在は東京23区内に限定、約100社と契約し、配達はウォーターサーバーの会社と組んでコストを抑えている。
便利な世の中になったと思っていても、まだまだ不便な点は日常生活にたくさんあり、それに気づいてビジネスチャンスに生かす人たちがいた。いずれも忙殺された社員時代の経験から起業した、20代の若手ベンチャーだ。ビジネスセンスのよさとともに、自らの不満を諦めない粘り強さがあったということだろう。(ライター:okei)
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