「自己PR」と「自己紹介」は何が違う? 就活生を惑わせる採用担当者の「いい加減さ」
「自己PRと自己紹介はどう違うのでしょうか?」――。私のツイッターには、ときどきこのような相談が来ます。ネット上の様々なサイトでもこのような記事をよく見かけますので、よほど多くの就活生が悩んでいるのでしょう。
私がツイッターで相談を受けた時は、いつも「両方とも同じです。違いはありません」と答えています。しかし、就活本や就活サイトの中には「自己紹介と自己PRは全く違うものだ!」と書くところがあるものも事実です。(文:河合浩司)
結局は「どちらも同じ」のはずなのだが
採用担当者の立場から言えば、どちらの意図も「どんなことを聞けば、この就活生の人柄が見えてくるのかな? そのヒントを知るために自分自身のことを話してほしい」というものです。もっと簡単に言えば、「あなたのことを教えてください」というだけなのです。
自己紹介で部活動のことを話してくれたら、「なるほど。この学生さんは、部活動のエピソードを聞くと人柄が垣間見えるかもしれないな」と考え、詳しく質問していきます。
アルバイトの話をしてくれたら、「どのように取り組んできたのかな? お客様や周りのスタッフに対し、この学生さんはどのように考えて実際にはどんな行動をしてきたのかな?」と思い、いろいろ質問していくのです。
このように、あくまで「面接時の会話を進めるためのヒント」として、自己紹介あるいはPRの話を聞いているのです。
その一方で「自己紹介と自己PRは全く違う」説を唱える人いわく、「自己紹介は学校名と名前だけを言うもの。自己PRは自分の強みを売り込むもの」とのことです。
念のため採用担当者の知り合いに聞いてみたのですが、このような使い分けをわざわざしている人はいませんでした。当然ですよね。学校名と名前だけなら、履歴書に全て書いてあるので、いちいち聞く必要などありません。貴重な面接時間をそんなことに費やすわけがないのです。しかし、就活生からはこんな反論もあるでしょう。
「1分くらい自己紹介をした後に、自己PRを求められて困ったことがありますよ!」
どちらも使わずに「別の質問」で明確化すべきでは
これには2つの理由が考えられます。1つは、自己紹介が何を言いたいのかが全くわからなかった場合です。短い時間で何かを伝える訓練をしている就活生は少ないので、自己紹介が意味不明なことは少なくありません。ヒントが欲しいのに全く得られなくて、採用担当者が困ったのかもしれません。
もう1つ考えられる理由は、採用担当者が「面接の素人」であった場合です。人事にとって採用業務は、抱えている業務の一つでしかありません。当然ながら、面接が苦手であったり、採用を全く研究していなかったりする人もいるわけです。
人事部がない中小企業ならなおのこと。意味も分からずに「自己紹介を聞いて、自己PRも聞く」などとしていることは普通にあります。あいまいな言葉を使う採用担当者が就活生を困らせているように思えてなりません。聞きたいことがあるのなら、より明確に質問すべきでしょう。
もっとも、私はもうずいぶん前から「自己紹介」や「自己PR」の質問をしなくなっています。履歴書やエントリーシートからでも質問は考えられますし、「学生時代に力を入れたこと」を聞くことで十分に代替が可能だからです。
「自己紹介・自己PRを聞かれるから練習しておこう」と準備している就活生がいたら、肩透かしになるのは申し訳ないところではありますが、私は就活生を惑わせないことを優先したいと思っています。
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