サラリーマンが失敗しながら事業を学べる「Fukusen(フクセン)」のしくみ:ビジネスデザイナー細野真悟さんに聞く「小さな事業」の作り方 (3)

ビジネスデザイナーの細野真悟さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

ビジネスデザイナーの細野真悟さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

リクナビNEXT編集長やリクルートキャリア執行役員を経て、現在はフリーのビジネスデザイナーとして活動する細野真悟さん。自らの挫折経験を踏まえ、新しいビジネスを作ろうとする人の実践型コミュニティ「Fukusen(フクセン)」を運営している。

インタビューの3回目は、Fukusenの運営方法について。会員から毎月の会費を集めながら、細野さん自身の収入は実はゼロ。なぜそんなことをしているのか。聞き手は株式会社グローバルウェイ取締役の根本勇矢。(構成:キャリコネニュース編集部)

月1万円の会費は「軍資金」としてプール

――前回は、細野さんが運営する「Fukusen」(フクセン)というコミュニティで生まれたスモール・グッド・ビジネスのアイデア例を紹介してもらいました。Fukusenはそもそも、どういうコンセプトで運営されているのでしょうか。

細野:Fukusenは、本業以外にスモール・グッド・ビジネスをやりたい人が集まったコミュニティです。メンバーは40人ほどで、最初に1時間30分×6回くらいの基本的なレクチャーをさせてもらっています。「ビジネスモデルってこうやって考えるんだよ」とか「マネタイズってこうやるんだよ」というような。

それを終えたら、メンバーに「こんなビジネスはどうか」というアイデアを持ち込んでもらいます。それを僕が、どうすれば年間売上1000万円くらいの、ちょうどいいサイズの、マネされない、儲かりすぎないビジネスになるかを一緒に考えて、行けそうとなったら実験する、ということを毎週やっています。

――スモール・ビジネスのビジネススクール 兼 リアルタイムのケーススタディですね。

細野:会費は毎月1万円ですが、これは僕の懐には入らず「軍資金」という形で貯金箱に入れています。「これは1000万円規模のビジネスになるかも」と思ったものには、「実験」という名目で軍資金から実験投資を行います。

アイデアを出す人は、聞き役の私を相手に壁打ちをするんですが、その様子を他の39人が見ている。なので、こういうサイズのビジネスってこうやって考えるのかとか、こういう実験して大失敗してるのか、といったことを他人のビジネスからも学べます。

自分ひとりでやるよりも、40人全員でやると40倍速く学べる。ちなみに、いま出ている5~6個の実験は、下手したら全滅すると思っています(笑)。でもいいんです。なぜ失敗したのかを学べたら、次のやつはもっとうまくいくから。

個人では出せない金額の「投資」が可能になる

共済型ビジネス実践ファーム「Fukusen」の仕組み

共済型ビジネス実践ファーム「Fukusen」の仕組み

――「実験」とは具体的にどんなことをするんですか。

細野:前回お話しした「SUMUCAMO(スムカモ)」の実験では、都内のあるマンションの名前でリスティング広告を出し、購入を検討している人に「お住まいの方にヒアリングできますよ」というランディングページ(LP)へ誘導し、申し込みが来るか待っています。

で、申し込みがあった瞬間に、そのマンションに「たった30分5000円のいいバイトがありますよ」とチラシをポスティングします。お客がいる状態の方が、ヒアリング対象を集めやすいですから。実験に使うお金は、みんなの軍資金から出しています。

個人は毎月1万円払いながら学んでいる。でもそのお金は払いっぱなしにはならず、自分がいいアイデアを思いついたときに、個人では出せない金額の広告費やLP作成費を軍資金から出せますよ、という仕組みです。

――個人で起業して、リスティングとLPで50万円の見積もりが来たら悩みます。ビジネスでのリターンは、最初のアイデアを出した方が得られるのですか。

細野:そうです。その人がオーナーとして、そこから出る利益は未来永劫どうぞ、という形になります。

――すると、細野さんはどこで利益を得てるんですか?

細野:僕はいま6か月くらいタダ働きをしている状態ですけど(笑)。「売上が年間1000万円を超えるビジネスになったら、売り上げの10%を3年間ください」という契約にしてあります。そこで初めて回収することになりますが、下手したら一個も立ち上がらずに、ただの趣味で終わる可能性もあります。

でも、とにかくこれが面白くて。僕自身も、みんなのチャレンジを見るのが面白いし、実験の結果を見るのも僕にとって勉強になるし、楽しんで参加してくれている人たちとの交流も楽しいし。ここから一件でも成功例が出ると「出た~!」っとなるじゃないですか。夢がありますよね。

脱サラでも起業でもフリーランスでもない選択肢

実践型コミュニティ「Fukusen」のサイトより

実践型コミュニティ「Fukusen」のサイトより

――これと比べると、フリーランスを本業にする危うさが分かりますね。

細野:結局スキルって、過去に会社の中でもらっていた仕事の中で培われたスキルでしかないから、会社から仕事がもらえなくなると、だんだん粒感の小さい仕事ばっかりになって、自分のスキルは活かせているけど、やりたくない仕事をやらなきゃいけなくなる。

「脱サラでも起業でもフリーランスでも副業でもない選択肢」って、みなさんあまり考えたことがない。でも具体的な事例を話してみると「なるほど。そのサイズでいいなら、もっと他にもあるかも」とみんなで考え出すんですよね。

あと、フリーランスや独立となったときに、どうしてもインターネットビジネスというか、最後にはブログ書いてアフィリエイトしたり、セドリ(古本などの転売)をしたりとか、そういうことになってしまう。でも、そうじゃない領域でスモール・ビジネスという選択肢があることを知ってもらいたい。

――細野さんにとっても、Fukusen自体がスモール・グッド・ビジネスですね。いつお金が入ってくるか分からないから、本業にはできないですし(笑)。

細野:無理です。食ってはいけない。でもスモール・グッド・ビジネスにすることで、時間を味方につけることができる。収益化するまでの時間をじっくり待てるわけですが、こんなの企業じゃ絶対無理なんですよ。

この間もメンバーに話したんですけど、「1000万円規模のビジネスが出るまでには5年くらいかかる。その間に5~6個は実験のために軍資金を使うくらいの覚悟でいてくれ」と。そのくらいやらないと、うまくいくのは無理なんだと。

なぜなら、みなさん事業を立ち上げた経験なんてゼロなんです。これだけ経験積んできた僕でも、10回に1回うまくいくかどうかです。みなさんもっと失敗していいんですよ。【過去のインタビュー記事はこちら】

細野真悟(ほその・しんご):リクナビNEXT編集長、リクルートキャリア執行役員、リクルートグループの子会社の社外取締役を歴任。現在は、企業間レンタル移籍プラットフォームのローンディールのCSOを務めるかたわら、音楽コラボアプリを運営するnana musicの戦略顧問、および共済型ビジネス実践ファーム「Fukusen(フクセン)」を主宰するビジネスデザイナーとして活躍中。。

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細野さんへのビジネス壁打ちの相談は「タイムチケット」まで。