ワタミの「自主研修」 社員は確かに「強制参加」と認識していた
私が在籍していた数年前までのワタミには、過酷な日程の研修がありました。店で朝の4時くらいまで仕事をし、そのまま少し休憩後、朝の9時から12時までの研修があり、それが終わって16時から店の仕事に出ていました。
もちろん店舗はシフト勤務で、早番も遅番もありますから、必ずこの日程というわけではありません。しかし、こんな日程でも当然のように行われていたことは事実です。今にして思えば「よくやってたなあ」とは思います。
多忙な仕事の合間に何かと社員が集められていた
ワタミでは、大きく分けて3つの研修が行われていました。1つめは、会社の方向性などを伝える目的の「早朝研修」です。これは店長以下の「一般社員研修」と、店長クラスだけの「店長研修」といったように、立場によって分けられていました。
2つめは、ワタミの理念を再確認する目的の「理念研修」です。これは「一人でも多くのお客様に、あらゆる出会いと、ふれあいの場と、安らぎの空間を提供する」といった理念を、繰り返し従業員に浸透させるもので、一種の宗教的儀式のようなものでした。
3つめは、新宿や吉祥寺など店舗のエリアごとの「社員研修」がありましたが、これは社員間の意見交換が主な目的でした。
早朝研修とエリア社員研修は毎月、理念研修は3か月に1回実施されました。理念研修では、終了後にアンケートを取っていました。さらに、年1回の「ボランティア活動」、創業日に行われる「ワタミ創業祭」、事業全体の活動報告を行う「全体会議」もありました。
現在のワタミでは研修の時間が削減されているそうですが、これは従業員の過労自殺裁判を受け、労働環境の見直しが行われたことが理由です。それ以前には、確かにそのようなことが行われていたのです。渡邉美樹さんが企業批判に反論して、
「真実をわかってもらう日が必ず来ると信じて」
などとフェイスブックに書いていましたが、ゆるぎない真実はこちらの方なのです。
上司が進捗を確認する研修は「強制」でしかない
このほか、私が勤めていたころには渡邉さんの「ビデオレター」が毎月店に送られてきて、それに一言コメントを書くことが求められていました。内容は「カンボジアに学校を作りました」「新しいワタミの店ができます」といったものです。
もっとも、ビデオは研修というより業務連絡と受け取られていましたが、いま思えば創業者による理念浸透の一環といえるかもしれません。
さて、ここでハッキリさせたいことは、これらの研修はすべて「業務」であり「強制参加」だったということです。何故そう言い切れるかというと、これらに参加しないと上司から「いつボランティアに参加するんだ?」「いついつ研修だからな!」と、活動の進捗状況や研修の日程を言われていたからです。
本当に自由参加といえるのは、キッチン責任者や副店長向けの研修のみではないでしょうか。これは店長研修までのステップとしての研修で、最後の店長研修にたどり着くまで全8回ほど。場所は本社で、数か月に一度行われていたと記憶しています。
とはいえ、参加しなくても上司から何も言われなかったとしても、これらも任意参加ではなく、いつ受けるかは自己責任ですが、店長になるためには必ず受けなければなりません。
裁判で「自主参加」を強調するのは理解できない
以上のことから分かる通り、社員たちは会社の言う「自主的な参加の研修」を、明らかに強制力のある「業務」としてとらえていました。社内にも、
「また明日研修だよ。面倒だな。今日寝れないよ」
「俺まだボランティア行ってないから早く行かないと」
といった会話もありました。明らかに参加しないといけない、いわゆる仕事として捉えているからこその会話だろうと私は思います。
こんな具合ですから、私の1年先輩の従業員が過労自殺した裁判で、ワタミが「研修は強制ではない。自主的な参加であった」などといった表現をしていることに、「それはありえないな」とハッキリ言うことができます。
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【プロフィール】ナイン
北海道在住の20代後半の男性。大学卒業後、居酒屋チェーンWを運営する会社に正社員として入社。都内店舗のスタッフや副店長として約4年間勤務した後、「もう少し発展性のある仕事がしたい」と転職。現場を知る立場から、外食産業を頭ごなしにブラックと批判する声には「違和感がある」という。Twitter/Facebook/ブログ