高所得者の「年金減額」検討に賛否 「多く納めてるのに」VS「このままだと若者の負担地獄だ」
政府の経済財政諮問会議が5月19日に開かれ、民間議員から「高所得者の年金を減らす」といった提言がなされている。国の赤字を削減し「持続可能な保健医療システム」を構築するのが目的だが、批判は必至の様相だ。
民間議員の提言は、経済再生と財政健全化のために「強い危機感を持って社会保障制度を改革する必要がある」というもの。このまま少子高齢化が進み、勤労層の追加負担が増せば、経済の好循環を阻害しかねないとの理由からだ。
税金で賄う「基礎年金の半額分」をカット
この改革基本方針として提言されたのが、「資産・遺産の社会還元の促進」と「所得や資産に応じた負担」の検討だ。具体案のひとつには、高所得者の高齢者には年金を満額支給せずに減額するというものまで出ている。
現在の年金制度は、満額で約6万5000円が支払われている基礎年金の半額分は、税金でまかなわれている。提言では、これをカットしようというのだ。さらに、患者の自己負担を軽減する「高額療養費制度」や、75歳以上に適用される「後期高齢者医療制度」についても、経済力に応じた負担を求める案が出ている。
安倍総理大臣はこうした提言を受けて、必要な公共サービスを維持しながら歳出を抑制し、「インセンティブを重視した改革や公的部門の産業化」を進める必要性に理解を示した。しかし塩崎厚労大臣はこの分野での歳出抑制について、
「経済成長率や税収の伸びを下押しする効果があることに留意をすべき」 「将来世代の給付水準の確保の観点から議論をすべきである」
などと指摘し、慎重な姿勢を示している。
こうした提言が各メディアで報道されると、ツイッターや掲示板などネット上では批判が相次いだ。
「『貢献に応じた分配』の原則が踏みにじられると、後々不幸だぞ」 「払った分も貰えないなら年金に頼らず自分で貯蓄したいんやけど? 今までの分返してよ」 「所得税の減税措置くらいは盛り込まないと、単に年金システムの延命措置にしか見えない」
矛先は政治家にも「手始めに議員年金を大幅に減らそうか」
批判の声は、多くの税金を納めている高所得者の年金が「なぜ減額されるのか」という点にも集まっている。確かに余裕のある人には我慢してもらった方が国としては助かるが、貢献度が上がるほど、もらえる金額が減るような年金の仕組みでは、納得できない人もいるだろう。
若い世代からは、少子化によってこれまで自分が納めた分すらもらえなくなる危機感から、「やっぱり年金保険料なんて納めない方が良いな」といった声もある。
さらに矛先は「手始めに議員年金を大幅に減らそうか」「苦労知らずで育った閣僚の頭の中は空洞なのかしら」と、政治家や公務員に向いているものも少なくない。
とはいえ、現行の社会保障制度を改革なしで維持するのは難しい。そのため「ある程度は仕方ない」と諦め、将来のために我慢しようという意見が散見されるのも確かだ。
「これまであまりに現役世代の負担に偏り過ぎてた」 「この方向は避けられないね。問題は『収入多い』 がどの程度かですね」 「当然の施策。先進国は、どの国でもやっている。このままだと、若者の負担地獄や財政破綻も、現実になるからね」
今後は、6月末までに政府がまとめる2020年度までの財政健全化計画に、この提言の内容がどこまで盛り込まれるかが焦点となりそうだ。
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