苦手なお客様にも笑顔で接客できる「たったひとつの確実な方法」
ホテルで働いていく中で、大事にしなくてはいけないものは何でしょうか。身だしなみや言葉遣いなど色々ありますが、私は何より「笑顔」だと思っています。
笑顔を心がけてさえいれば、大抵のミスはカバーできるといっても過言ではありません。私がいたホテルにも、ミスはしないが少し仏頂面なAさんと、時々ミスをするけど常に笑顔のBさんがいたのですが、お客様からの評判は格段にBさんの方が良かったです。(ユズモト)
笑顔のレベルを3段階使い分けるスタッフ
実は、ホテルスタッフは、笑顔のレベルを3段階くらいに分けて、状況に応じて使い分けていたりします。「笑顔レベル1」は、30%くらいの笑顔。少し口角をあげて微笑む感じです。フロントでの待機時や、館内巡回時などはこの表情。少し笑みを作っておくことで、話しかけやすい印象を与えることができるのです。
「笑顔レベル2」は、50%~70%くらい。歯を見せてニッコリ笑う感じでしょうか。お客様とお話しするときはこれくらいです。先輩のM崎さんいわく、会話の内容により笑顔レベルを微調整することができれば上級者だそうです。
「笑顔レベル3」は、100%。目も口も笑っている全力の笑顔です。話しかけられて返事をするときや、お出迎え・お見送りのときは絶対にこの笑顔! 笑顔が良ければ設備がたとえイマイチでも、ホテルの評価をぐんと上げることができるのです。
ちなみに、クレーム対応のときなどは、笑顔は逆効果になってしまうので、シリアスな顔をするよう心がけます。ホテルに宿泊する機会があれば、スタッフの表情を観察してみるのも面白いかも知れません。
――と、何だか少し偉そうなことを言っていますが、実は私は最初「どのお客様に対しても笑顔で接する」ということができませんでした。少し嫌味っぽいお客様に当たったときなどには、顔が引きつってしまっていたのです。
どうしたら、苦手な相手にも笑顔で接客ができるだろう…。そう悩んでいたある日、支配人が突然私に聞いてきました。
「会ってみたい芸能人は?」「え? ゆずの北川悠仁さん…」
「顔が引きつりそうなお客様に当たったら、『私はいま、北川悠仁を接客している!』と妄想してみろ!」
試しに「会ってみたい芸能人」を妄想してみると…
ええ? どういうことですか、と聞くと、支配人いわく、
「目の前にいる相手が、北川悠仁だと思うんだ。そしたら想像するだけで幸せな気持ちになって、自然と笑みがこぼれるだろう?」
とのこと。それは無理があるでしょ、と思いつつも、せっかく助言をいただいたので実践してみることにしたのです。その結果、自分でも驚いたのですが、本当にすんなり笑顔が出てくるようになりました。
さすがに、お客様を北川さんだと完全に思い込むことはできませんでしたが、少し嫌だなと思ってしまいそうなときに、大好きな北川さんの顔を思い浮かべることで、穏やかな気持ちになることができ、笑顔になることができたのです。
さすが経験豊富な支配人、とそのとき感動したのでしたが、これには後日談があります。少ししたある日、「前に教えていただいた『お客様を北川悠仁だと思う』っていうやつ、ものすごい効果です!」と興奮気味に報告したところ、
「え、本当に実践してたの? あれ適当に言ったんだけど」
と真顔で言われ、驚愕したのでした。でも私にとっては効果絶大だったので、これを読んでいる接客業の方や営業さん、苦手なお客さんに当たった時にはぜひ試してみて下さい。そして、効果があったら私に教えて下さいね。
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