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応用地質が「地中の見える化」の実現に前進 業界に先駆けたDX推進で新市場創出へ

応用地質株式会社 取締役常務執行役員 情報企画本部長の天野洋文さん(同社提供。以下同じ)

地質調査の最大手である応用地質株式会社は2021年度から新たな中期経営計画において、成長ドライバーにDX戦略を掲げ、「地盤三次元化技術」の開発の加速、そして「地中の見える化」による新たな市場創造をめざす。

最先端のデジタルテクノロジーと地質調査という専門技術の融合によって応用地質が目指すこととは。取締役常務執行役員情報企画本部長の天野洋文さんに話を聞いた。(文:千葉郁美)

地域社会を守る公共事業への取り組み

高度成長期から60年以上にわたり、さまざまなインフラ構築に携わる応用地質。独自の地盤情報を持つ地盤調査のエキスパートとして、国内のインフラ・メンテナンスや防災・減災、環境への取り組みや、資源・エネルギーに至るまで、人々の生活基盤を支える事業を展開している。

公共事業や社会課題への取り組みに注目が集まる応用地質だが、DXを推進する企業としても名高い。DXを経営戦略の中枢と位置づけ、デジタルサービス開発の推進やリモートワーク環境の整備をはじめとした働き方改革を実践するなどの様々な取り組みが評価され、2020年の「DX注目企業2020」に選定。また、自然災害のリスクをいち早くキャッチして災害からの逃げ遅れゼロを目指す「ハザードマッピングセンサソリューション」を開発し、同サービスは2020年11月に「MCPC award 2020サービス&ソリューション部門」で最優秀賞を受賞した。

ハザードマップソリューションのデータ管理画面

AIやIoTの先端技術と、応用地質が保持する地質や地盤、防災減災のノウハウを融合させた取り組みは、さらに大きな課題へのチャレンジへと突き進む。4つの事業セグメントを横断する基幹技術「地盤三次元化技術」の開発と、「地中の見える化」による新たな市場の創造だ。

すべての事業セグメントを横断する基幹技術「地盤三次元化技術」

地質工学の創造を旗印に創業した応用地質は、地質調査の分野を超え、豪雨等の防災や減災、環境保護、新エネルギーの普及拡大といった様々な分野を担い、いわば地球規模の安心安全に関わっていると言っても過言ではない。「地盤三次元化技術」の開発は、応用地質が携わるすべての事業セグメントを横断する基幹技術として重要だ。

「地盤沈下や建物の倒壊といった地盤に関わる自然災害を契機に、地盤を三次元化して地盤リスクを把握することに重要性が高まりました。さらに時間軸を加えた四次元化の需要もますます高まっています」(天野さん)

すでに製品化され、活躍しているソリューションも少なくない。

2019年にリリースされた「オクタスモデラー(OCTAS Modeler)」は、三次元の地盤モデルを作成するには地質の専門技術者でなければ判断が難しいところを、比較的単純な地盤や地質の構造であれば高度な地質学的知見を持ち合わせなくても作成できる三次元化ソフトウェア。地質リスクを三次元化し、基礎構造物や地下工事のBIM/CIM化をサポートしている。

「こうした(地盤三次元化の)ニーズに応える三次元化ソフトや地盤内部を三次元で可視化する物理探査技術、三次元探査機器の開発は、スピード感を持って推進しています」(天野さん)

日立製作所との協働で開発「地中可視化サービス」

路面化探査車

また、応用地質のインフラ・メンテナンス事業において注力しているのは、日立製作所と協働で開発する「地中可視化サービス」だ。応用地質がノウハウを持つ地中レーダーと解析技術、そして日立製作所のAI技術とクラウド環境を活用。正確な地下マップを構築することを目指し、開発を進めている。

「これまで地中の埋設管は地面を掘り返してみないと分からないという状態でした。昨今では電線を地下に埋める無電柱化や都市の再開発など、地下空間の利活用ニーズも高まっています。正確な地中マップ作る必要がありました」(天野さん)

地中埋設管の3次元可視化画像

私たちが日ごろ利用する道路の下には、上下水道やガスを供給する管が張り巡らされている。高度成長期の急速な都市化によって設置された埋設管は、正確な位置情報が分からないという問題を抱えている。また、埋設管の老朽化も深刻だ。上下水道管の老朽化による道路の陥没事故は、国内だけでも年間3,000件も発生していると言われている。

「埋設管の位置を正確に把握することはもとより、地中が可視化されることによって地盤の状況がわかり、無電柱化や都市開発にも寄与することとなります。
こうした技術の開発は、地質の技術者とデジタルテクノロジーを融合することで成し得ています。開発を進めて、日本全土の地中マップを作成したいですね」(天野さん)

地中可視化サービスは2021年10月より本格的なサービス展開が予定されている。

国土の地中をすべて可視化したい。DXはさらに加速度を増す

2021年度より新たな中期経営計画がスタートした応用地質は、成長ドライバーにDX戦略を掲げた。イノベーションに向けた強力な推進体制を引き、さらなる価値創造へと邁進する。

「日立との協働で作り上げている「地中可視化サービス」、豪雨や台風などから国土をモニタリングする「ハザードマッピングセンサー」などのサービスが、ここからの3年間でしっかりと実を取ってくる部分と考えています。
地中の可視化に関する技術の向上、そして次のプロジェクトXを作っていく。強力な推進体制で進めていきたいと考えています」(天野さん)

「国土すべての地中を見える化する」。応用地質は、創業以来の大きなチャレンジにむけて着実な一歩を踏み出している。

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