NHKが「ブラックバイト」の手法を紹介 学生に重責負わせて「意識が甘い」と叱責
学生がアルバイト先で不当な扱いを受ける「ブラックバイト問題」。特に個別指導塾で働く塾講師のアルバイトは、準備や報告時間に賃金が支払われないなどの悩みを抱えた学生が多くいるという。
こうしたなか、塾講師として働く大学生らが2015年6月4日に個別指導塾ユニオンを結成し、個別指導塾の運営会社3社に労働条件の改善を申し入れた。同日放送のNHK「NEWS WEB」では、「深知り」コーナーでこの問題の背景を紹介しながら、対策を考えた。
真面目な学生ほど学校に行けなくなってしまう
学生のアンケート調査によると、塾講師の時給は平均1216円と他業種に比べて高額だが、実際には授業1コマ当たりの金額という塾が多い。事前の準備や個別指導後の報告などには賃金が支払われず、結果的に最低賃金以下の給料になることもある。
学生のブラックバイトを調査したアンケートでは、塾講師に限らず体験した不当な扱いに48.8%の人が「何もしなかった」と答え、我慢している学生が多いことが分かった。
番組には若者の労働相談を受けているNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんが出演。「嫌ならやめればいい」と言われがちなブラックバイトだが、今野さんは「学費が上がり奨学金制度の不備もある」と学生の生活環境の悪化を指摘し、さらに企業側の思惑を説明した。
「労働者を時給の低い高校生・大学生に絞り込み、責任のある仕事をしてもらうとコストカットができるという経営戦略の中に、ブラックバイトがはまり込んでしまっている」
学生は、最初は仕事を任せて貰えてやりがいがある。無理が出てきて辞めたいと思ったころに、「あなたには責任がある」「そんな甘い意識じゃ社会人としてやっていけない。ここで学んだことが社会に出て役に立つ」と言うという。すると学生は、
「自分は甘かった。こんな意識では自分は社会人になれないんだ」
と真面目に受け取ってしまう。夜間勤務を毎日シフトに入れられて、学校にまったく行けなくなってしまった人もいるそうだ。
相談に訪れるのは、学生生活を破綻させた子の親
番組に寄せられたツイートには、こんな言葉があった。
「友人の息子が『ブラックバイトに文句を言わないこと』を『社会の厳しさを理解すること』と勘違いしていた」
今野さんのところに相談に来るのは学生本人ではなく、子どもの学生生活が破綻しているのを見て心配した親だ。自力では抜けられないほどハマってしまった人は、やはり周囲が救いの手を差し伸べるべきだろう。
今野さんは「仕事だからしっかりやらなければならない」としつつ、「最低賃金を割ったり、大学生にだけ責任を負わせるやり方でいいのだろうか、ということ」と問題を提起した。
ブラックバイトユニオンでは今年4月から、厚生労働省は全国およそ800の大学にチラシを配布し、ブラックバイトに関する注意喚起をしているという。学業と仕事の両立が難しいなかで、さらに雇用側と戦うのは至難の技かもしれないが、こうした企業の思惑を知り、飲みこまれないように対応することが重要だと感じた。(ライター:okei)
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