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外国人観光客が消えた! インバウンド目当てだった観光地の涙ぐましい努力

展示会にいたゆるキャラ

写真:昼間たかし

そろそろコロナ後の需要回復に向けた動きも本格化しているのか。昨年来、コロナ禍によって多くの産業が打撃を受け、生き残りをかけた模索が続いてきた。しかし、ワクチンが行き渡ったこともあり、今はすっかり自粛明けムードに。それを受けて観光産業など、様々な業界でコロナ後を見据えた動きが始まっているようだ。その現状を追った。(取材・文=昼間 たかし)

今できることをやる

11月初旬、港区の東京都立産業貿易センター浜松町館で開催された「EXPAT EXPO TOKYO 2021」。外務省や観光庁などの後援で開催された「在日外国人向け」の展示会で、日本で暮らす外国人向けのビジネスを展開する企業・学校などのブースが軒を連ねていた。

そうした中で目立っていたのが全国各地の観光協会などのブース。長野県や滋賀県、静岡県、北九州市など全国各地の観光地のPRが行われていた。

これらの地域に共通するのは、これまで外国人観光客をあてにした戦略をとっていたことだ。

コロナ禍以前には、「観光公害」という言葉が社会問題として取り上げられていた。外国人観光客の増加にともない物価の上昇や交通機関の混雑、文化の違いによるトラブルなどが深刻化して地元住民の生活に支障を来していた。

ところが、コロナ禍で状況は一変した。これまで「公害」とまで表現されたような混雑が一気に解消され、しかしながら戻ってきたのは「平和な日常」ではなく経済危機だった。京都市は、自治体の倒産である財政再建団体入りが秒読み状態。ほかも多くの観光地が顧客の激減による経済の低迷に喘いでいる。

そうした中で、在日外国人向けの展示会に出展する意図は、どこにあるのか。出展していた長野県観光機構の担当者は、こう語った。

「コロナ禍前には、外国人観光客が重要な客層になっていました。アルペンルートなど、外国人に好まれる観光地はいくつもあるのですが、もっとも有望だったのはスキー客です。すでに日本国内ではスキーは斜陽産業になっていたのですが、日本人客の減少を埋めてくれるのが外国人のスキー客でした。なにしろ、彼らは1?2週間は滞在してくれます。コロナ禍が一段落すれば、外国人観光客も回復すると予測されます。今回の出展はそれに向けた足がかりだと考えています」

ほかの観光系の出展者にも聞いてみたが、やはりコロナ禍からの回復後に復活するであろう外国人観光客にかける期待は大きい。既に10月以降、日本国内でも旅行者は回復しつつある。この取材に出向く途中に通ったJR浜松町駅でも、モノレール駅のほうからスーツケースをゴロゴロと引く人が、ぞろぞろと降りてきてはタクシー乗り場に並ぶ姿を目にした。

ただ、まだ遠方旅行を再開する人の数は決して多くない。観光といっても、行くのは「近場」の狭い地域に限られている。観光地に落とす金額も決して多くないので、本格的な回復には到っていない。そうした中で、やはり期待されるのは「外国人観光客」というわけか。

そうした将来を明確に見据えて出展していたのが、北九州観光コンベンション協会。正直「あれ、北九州って外国人観光客が来るようなスポットなんてあったか?」と思ったのだが、ブースにいた担当者も、その通りだという。

「今日もやってきた外国人の方に聞いたら、けっこう北九州市って知らないという人が多くて……」

コロナ禍以前は、同じ福岡県の福岡市はアジア圏の玄関口として多くの観光客が九州観光の拠点として必ず訪れる都市になっていた。対して、北九州市はまったくの無名という状況が否めなかった。

「なので、コロナ後を見据えて、在日外国人を通じて口コミで拡げてもらったりしつつ備えるという目的で出展してみました」

こうして話を聞いてみると、まだ海外との往来が規制され、国内移動でも感染対策に気を遣うことを強いられる、出口の見えない状況の中だが、「今のウチに考えつくことをやっておこう」と懸命にもがいている感じがあった。

馬鹿にできない「祭」のパワー

会場では「民族衣装のファッションショー」も開催されていた。ショーを企画したトライフルは展示会に外国人通訳などのキャストを派遣する企業。CEOの久野華子さんによると、展示会産業も次第に回復しつつあるという。

「既に多くの人がコロナ禍後を見据えて動き始めているのは確かでしょう。昨年来、暗い情勢が続いていたことを考えると、いま重要なのはいかに楽しくやってみるかだと思って、こんな風にしてみたんですよ」(久野さん)

ショーは別にプロのモデルがランウェイを歩くわけではなく、日本に住んでいるその国の人が、各々民族衣装を着て歩くという、ファッションショーというよりは、なんかの祭り的なコーナーであった……。だが、確かに先の見えない状況について、心配だけをしていても仕方ない。感染対策は前提としつつも、日常を「楽しくしよう」という田舎の祭り的なものの必要性は、むしろ高まっているのかもしれない。

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