金曜ロードショー『ローマの休日』の好反応で高まる期待 いよいよ「午後のロードショー」が注目される時が来たのか?
来月の日テレ「金曜ロードショー」の放映日程が発表され、細田守監督『時をかける少女』と『竜とそばかすの姫』が2週連続で放映されると話題になっている。ジブリを放映するたびにSNSで皆が盛り上がる「金ロー」。アニメ作品の躍進ぶりはすごいの一言しかないが、そんな中、5月13日に放映されたオードリー・ヘプバーン主演の名作『ローマの休日』が世帯視聴率9.8%という成績を残した。このことの意味を考えてみたい。(文:昼間たかし)
テレビで放映しないと出会わない作品も
『ローマの休日』といえば、ほぼ無名の新人だったオードリーが一躍スターになった伝説的作品。今でも作中に登場するローマの名所は「あの『ローマの休日』に登場した」と説明されるし、現地ではベタな土産物の定番として売られている。そんな名作の18年ぶりとなるテレビ放映。地上波で白黒映画が放映されるのも久しぶりの出来事だ。
今回の放送が話題になった理由は吹き替えに参加した声優陣もヘプバーンの演じるアン王女は『鬼滅の刃』で胡蝶しのぶを演じた、早見沙織。その相手役のグレゴリー・ペック演じる新聞記者のジョーは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』でギルベルトを演じている浪川大輔。そのほか人気声優陣がそろい踏みしたことだ。人気声優陣が多く参加したことに加えて、ヘプバーンの吹き替えは長らく担当していた池田昌子(『銀河鉄道999』のメーテル)からの交代ということもあり、話題になった。
正直、わざわざテレビで放映しなくてもDVDや配信で手軽に見られる作品。なのに、テレビ放映となると改めて盛り上がるのは不思議な現象だ。これは、決して声優が理由だけではなさそうだ。
かつては『金曜ロードショー』のか『日曜洋画劇場』や『木曜洋画劇場』『ゴールデン洋画劇場』などテレビの映画番組は、ごく当たり前の存在だった。しかし、ネット配信の普及と共に番組数は激減。定番の21時からの番組は『金曜ロードショー』だけに。深夜の時間帯に単発でなにかしらの映画が放送されることもなくなった。もはや、テレビ東京が関東ローカルで日中に放送している『午後のロードショー』が最後の砦だ。
テレビの映画番組の利点は「なんとなく観てしまう」ことに尽きる。配信サービスでは自分が観たい作品を探して選ばなくてはいけない。だから想定もしなかった名作(迷作)に出会う機会は限られる。テレビで映画が数多く放送されている時代には「興味がなかったけど偶然観たら面白かった」という出会いがけっこうあった。そうだろう……例えば『地獄の殺人救急車/狙われた金髪の美女』『サンタリア 魔界怨霊』とか、配信サービスで選んで観ることはまずない。そもそも、こういうテレビ局がなにかの抱き合わせで買ったとおぼしき作品はDVDになっていればまだマシで、
配信サービスにはラインナップされていない(おかげでチャック・ノリスに出会う機会も減った)。時には名作を時には迷作をと、世の中には様々な作品があることを教えてくれるのがテレビの映画番組の魅力だったはず。それが欠けたのは、やっぱり痛い。
……しかし、孤高で頑張る『午後のロードショー』、6月は『スピーシーズ/種の起源』『ジャッカルの日』『トータル・リコール』『アウトロー』とSF、サスペンス、西部劇がてんこ盛りだ。もっと評価されるべきだ!!