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【研究】人と違う強みを持つ研究者に。新規バイオ医薬品創製に挑戦するプロセス研究者

▲2022年現在は派遣先である海外の大学にて研究しています!

大学院では有機合成の研究に励み、博士号を取得後、新卒で2016年に入社した竹内 裕紀。入社以降はプロセス研究に従事し、2022年現在は、研究員として海外の大学に派遣中です。彼のバイオ医薬品のプロセス研究への想い、そしてこれから目指す研究者像について語ります。【talentbookで読む】

有機合成の専門性を活かし、プロセス研究者の道を志す

私が薬作りに興味を持ったのは、高校生の頃です。ヒトゲノムの解析が2000年頃に完了し、個別化医療の構想が世間で盛り上がっていたのがきっかけです。

大学では薬学部に進学し、生命科学を幅広く学びました。中でも有機化学の授業がおもしろくて「これだ!」と思い、有機合成の研究室を選びました。仲間と一緒に研究に没頭しているうちに、博士課程にまで進学していました。

就職活動の時は、新薬の研究開発に興味を持っていたことと、自分の専門性を活かせる領域として、製薬企業で薬のつくり方を研究するプロセス領域を志望していました。

住友ファーマを選んだ理由は、挑戦を奨励しサポートする風土があること。そして、海外売上比率が内資系製薬企業の中で上位であり、グローバルな舞台で活躍できる機会があると感じたことが大きな理由です。採用面接で研究内容をプレゼンした際に、当時の研究が一歩前に進むコメントを面接官からもらえて、「こんなにすごい研究者がいるんだ」と感激したのも理由のひとつです。

また、選考の中でお会いする社員の方々は、真面目で情熱を持った方が多くて、「研究者として一緒に働きたい」と思いました。

バイオ医薬品の技術確立を目指し、化学と生物の融合領域へ

▲ニューモダリティラボの実験設備と実験風景

当社のプロセス研究所は、低分子医薬品を扱うグループと、抗体・核酸・ペプチドなどの新規モダリティ(※1)を扱うグループとに分かれて取り組んでいます。

※1 新規モダリティ:「まだ一般的に使用されていない医薬品」や「使用され始めている医薬品」。中分子と呼ばれるペプチドや核酸関連化合物、抗体修飾剤、遺伝子治療剤、mRNA、再生・細胞医薬などを指す

プロセス研究所では、タンパク質医薬品の研究に特化したバイオプロセスチームが2016年に発足し、少数精鋭の専門家が集まって初期製法開発の研究に取り組んできました。近年では、創薬で取り扱うモダリティの多様化に合わせ、2021年度よりニューモダリティラボに組織改編し、研究対象となるモダリティを広げているところです。現在は10名程度のチームで、初期創薬の化合物選定協力から製造技術にいたるまで、幅広く研究を行っています。

入社して最初の2年間は、低分子のプロセス開発に携わりました。人に投与する薬は、安心・安定・安全を極めて高い水準でクリアして製造することから、洗練されたプロセス化学を学ぶことができました。

入社3年目に、抗体-薬物複合体(Antibody-drug conjugate:ADC)のプロジェクトの話が来ました。有機合成のバックグラウンドを活かしつつ、バイオとの融合領域に挑戦できそうだったので、そのプロジェクトに非常に興味がありました。上司に、「やってみたいです!」と相談をしたところ、チャレンジを認めてもらい、プロセス開発の担当者を任せてもらえました。

当時、社内にはADCの研究経験やノウハウも少なかったので、プロセス研究を進めるためにはイニシアチブを取りながら、関連する部門と協力しながら数多くのチャレンジが必要でした。

具体的には、バイオ医薬品の実験技術を習得できる講習会へ参加したり、小さいスケールでのADCの取り扱い経験のある他部署の研究員に指導を仰いだり、外部製造委託会社の選定について別プロジェクトを参考に社内に取り入れたりしながら、実際に手を動かして試行錯誤を重ねました。

その結果、社内にADCを含む新規モダリティの製造環境をつくることができ、技術確立のレベルが各段に上がりました。この成果は、共同研究者と共に所属本部内の本部長賞として高く評価されました。さらに、ADC化合物について製造委託先と臨床試験に供する原薬製造を確実に進捗させ、テーマ推進に貢献できたときは嬉しかったです。

海外大学との共同研究と海外派遣への提案と挑戦

▲派遣前に、ADCの海外製造委託先にも訪問。出張の合間にスイスの山にも登りました

私の所属する技術研究本部では、中期ビジョンのひとつとして、ニューモダリティ領域での価値創造を掲げています。社内のバイオを含むさまざまなモダリティプロセス研究を加速するため、製造技術の獲得および製品開発と並行して、プラットフォーム技術の開発にも挑戦しています。現在は米国の大学にて、バイオ医薬品の製造基盤技術に関連する共同研究を進めています。

これは、私からの提案で実現しました。COVID-19が流行する前に、バイオ医薬品の製造に関するプラットフォーム技術の開発に取り組めないかと考えていました。米国の研究開発を行う子会社に海外出張する機会があった際に、新規モダリティに関連する最前線の研究をしている大学の先生とディスカッションすべく、研究室訪問のコンタクトを取りました。

その時は、残念ながら都合が合わず、海外出張中にお会いすることはできませんでしたが、その後、先生が来日された際に、大阪にある当社の研究所にお呼びし、直接議論を行うことで先生の研究内容を深く知ることができました。この時のディスカッションがきっかけで、現在の海外派遣が実現しました。

海外の大学への派遣については、技術研究本部のSuGoI人材制度(※2)を活用することで、実現することができました。若手の挑戦を後押ししてくれる技術研究本部の風土を改めて感じました。

※2 SuGoI人材制度:技術研究本部内の独自の人材育成制度であり「個々の強み(Strengths)」と「結束(Unity)」で、「新しい価値(成果)(Innovation)」を産み出す取り組み。下記3つのシステムを含め、本部員の心理的安全性も確保しながら、知の探索を促し、イノベーションを加速するシステムを指す

SUGoIシステム①:新たな専門性を獲得する機会の提供を目的とした他本部、他部門派遣

SUGoIシステム②:研究者の積極的な社外交流を促すために社外研修の補強

SUGoIシステム③:研究者の“自分発創薬”を促進するための研究開発テーマ提案制度

COVID-19によって、海外に行けるタイミングが当初の予定より遅れてしまいましたが、2022年にやっと米国の大学に行くことができました。大学では、現地の学生と少人数のチームを組み、私がリーダー的な役割をしながら研究を進めています。

会社では、複数のプロジェクトを同時進行で進めていたので、ひとつのプロジェクトに専念できる時間は短かったと思います。大学ではひとつのテーマに集中でき、学生の頃に戻ったような感じです。贅沢な環境で研究をさせてもらっていると感じており、海外派遣をサポートしてくれた上司、同僚に感謝しています。

プライベートでも海外の生活を満喫しています。同じアパートに住んでいる現地の友人ができ、一緒に食事をしたり、ハイキングや釣りに出掛けたりしてリフレッシュしています。

人まねでない研究をして、強み・特徴を持った研究員になる

▲派遣先にある周期表オブジェとともに

学生時代の研究室の恩師が「人まねでない研究をしないといけない」と日頃から言っていました。私も、会社の中期ビジョンを意識しつつ、「人とは違う特徴、強みを持った研究者にならなければいけない」という想いを大切にしています。

新薬を世の中に出すまでには、多様な専門性を持つ研究者たちが力を合わせて、目の前の無数の課題を解決していきます。海外での研究経験を通して、今以上に際立った特徴・強みを持つ研究者になり、メンバーと力を合わせてバイオ医薬品の製品開発を進めていきたいと思います。また、自社の基盤技術の研究にもチャレンジしたいです。

留学後はこの経験を後輩に伝えて、海外派遣を活性化させたいです。画期的な新薬を開発するために、グローバルで活躍する研究員を増やしていくことにも貢献していきたいと思います。

住友ファーマ株式会社

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