「性について話すことは恥ずかしくない!」元セクシー女優がセクシュアリティの悩みに寄り添います
「性に対する概念を変えたい」。そう話すのは90年代後半に活躍した元セクシー女優の小室友里さんです。男女間のコミュニケーションの専門家としてセクシュアリティやジェンダーに関する講演に数多く登壇してきた小室さんは、スキルシェアのプラットフォーム「タイムチケット」で個人の相談に応じるサービスを提供しています。多忙な日々の中で個人の相談に応じる場を開いたのはどうしてなのでしょうか。話を伺いました。
90年代後半に名を馳せた「小室友里」という名のセクシー女優
男女間のコミュニケーションの専門家として活動している小室友里さんは、言わずと知れた元セクシー女優。1996年から1999年の3年間に活動し、DVDやVHSの総売り上げ本数は100万本を超える人気女優として一時代を築きました。
AV業界を引退したのち、セクシー女優としての経験と心理カウンセラーの資格を活かして男女間のコミュニケーションの専門家として活動を開始。現在はタレント業と個別のカウンセリングのほかに、性に関連する講演やセミナーに登壇し、講演を行っています。昨今では、経営者向けの「セクハラ」に関する講演やセミナーにも注力しています。
「性の話をすることは恥ずかしくない。そういう世界観を作っていきたいですね。
セクハラに関する講演を経営者の集まる会合で実施する機会が多いのですが、男女間のコミュニケーションの話というと、どうも色っぽいバイアスがかかってしまい、恥ずかしいという雰囲気になります。でも、そういうバイアスをできるだけ取り外して、性に向き合う時間にしたい。参加していただいている方には、その場のテーブルごとにグループワークをしてもらったりしています」
実際のグループワークでは、そこに集まった人の基準値や概念をテーブルの上に出してディスカッションをするのだそう。自分とは違う人の感覚を知る機会になるとともに、普段思っていても口に出しにくい「性」のことを声に出して言える機会にもなります。
「特に女性にとっては、男性に意図を伝えることが難しい状況がある中で、心理的安全性を担保された状態で『私たち本当はこういうふうに思っているんです』と伝えられることは、非常に気持ちの良い機会になっているようです」
性的な話題に嫌悪感を持ったり、「恥ずかしいことだ」と避けたりする風潮がある日本。特に女性がそれを声に出すこと自体が特別視されているなかで、小室さんは「性に対する概念を変えていきたい」と活動の幅を広げています。
人に話しにくいセクシュアリティの悩みを話せる場所に
小室さんは多くの人に向けた講演やセミナーを実施するほか、スキルシェアのプラットフォーム「タイムチケット」で個人のセクシュアリティに関する相談にも応じています。
「私の経歴上、性に関するかなりニッチな悩みでも、私だからこそわかってくれるだろうと話してくださることもあります。性に関する個人的な悩みって、たとえ友達同士で話したとしてもそれは情報共有であって解決や解消とはいかなくて、結局一人で悩んでいることが多いと思うんです。
私は実生活に近い話を共有して、今抱えている悩みを解消できるようなヒントを提供できるのが特徴だと思います。依頼者の方には、『ここなら話せる』と思っていただけると思います」
元セクシー女優の小室さんに相談できるとなれば男性の依頼者が多そうなイメージがありますが、タイムチケットではむしろ女性からの依頼が多いと小室さん。
「タイムチケットでは女性からご相談いただくことがとても多いのですが、なかでもセクシュアリティとキャリアがつながって悩んでいる方が多い印象です。相談の入り口は性の悩みなんですが、お話を伺うにつれてお仕事、キャリアの部分に直結した悩みだったりするんですね。本人はそれに気づいていないということも多くて、自分自身を知るきっかけになってもらえることもあります。
それから、性の悩みは生き方そのものの悩みでもあるんです。幼少期や青年期、性と対峙する時までにどのように教えられてきたのか、どのように生きてきたのかが、その人の性に対する概念の根幹に関わっているんですね。
依頼者のお話を聞く上でも、その方の生き方やものの考え方に触れていくことは大切です。特に日本人女性は性に関して抑圧されてきた文化があるので、『話してはいけないこと、はしたないこと』といった感覚を持つ人の方が多いかもしれません。私とざっくばらんにお話ししてもらうと、依頼者の方からは『言葉にしていくことで自分自身がとても楽になった』『話せることだけでも楽になった』とおっしゃる方は多いです」
日本人特有の「性のあり方」を変えるきっかけに
小室さんが多忙な中で個人向けのサービスを展開する背景には、「性の話をしていいんだ、という概念を広げるきっかけになれば」という思いがあったといいます。
「これまでに個人的な依頼で相談に応じることはあったのですが、タイムチケットのような誰もが利用できるプラットフォームにおいて、『性に関する相談』というニッチなサービスが認められることが、大きな価値なんです。
ぶっちゃけ、誰でもひとつやふたつはこの手の悩みや心配事を抱えていると思うんですね。でもそれが言えないのは、『こんな悩みを話してはいけないのでは』という一つのブロックがかかっていると思うんです。このブロックを外したいんですね。要は、そういった相談が、誰もが利用できる場所でも話せるようになるといいな思っています」
セクシー女優のセカンドキャリア構築に注力。「私がモデルケースになる」
ジェンダーに関わるさまざまな社会課題に対策が講じられていくなかで、AV業界も法律による整備が進んでいます。セクシー女優として一時代を築いた小室さんも、業界を知る存在として、自身の活動が業界を変えていけたらという思いを抱いています。
「セクシー女優はビデオ出演を引退したあと、普通の社会に戻れないケースが少なくないんですね。元セクシー女優の肩書きは外れないし、ほかの性産業にいくケースも多く、そうした世界から脱却できない女優も少なくありません。
私は『小室友里』という芸名でセクシー女優としてデビューしたことをきっかけに、今もタレント業や講演業をやらせていただいているんですが、20年以上も前のセクシー女優がその名前を使い続けてビジネスができているというのは、すごく意味と価値があることなんです。私が今後も活動を続けることで、業界のセカンドキャリアを作っていけるんだという、モデルケースにならなければなと思います。
また、AV業界は男性マターな業界で、性において『男性が喜ぶ女性像』を描き続けてきました。それが残念ながら今の日本人の性のベーシックになっている、というのも現実だと思うんですね。
その実態を、元々中にいた人間が少しずつでも一般の視聴者の方に伝えていくことで、女優のセカンドキャリアや、もっと広く言えば女性の性の地位向上にもつながっていくのかなと。
これが、元セクシー女優で今も活動を続けている小室友里が、社会に対してできる貢献と恩返しなのかな、と思っています」
・小室友里さんにセクシュアリティの相談をする