管理栄養士/半年で12kg痩せた経験があります。運動は苦手なので、食事の仕方を変えただけ! 運動嫌い・スイーツ大好き・自炊できない、そんなあなたのライフスタイルに即した、実現可能性の高い方法をご提案します。
糖質制限ダイエットとは?
――数あるダイエットの方法でも、手軽さから注目を集めている「糖質制限ダイエット」ですが、実際はどのようなダイエットなのでしょうか?
糖質制限ダイエットは、その名の通り炭水化物の一種である「糖質」の摂取量を抑えるダイエット方法です。
世間で言われている糖質制限ダイエットは、実は大きく分けて2種類に分類され、それぞれ痩せるメカニズムが違います。まずはその違いを知ってもらえるといいと思います。
1.糖質を厳しく制限して脂質をエネルギー源にする方法
人は通常、糖質をエネルギー源として活動していますが、糖質がなくなると糖質の代わりに脂質をエネルギー源として使うようになります。その体の仕組みを利用して、体脂肪を燃焼させる方法があります。「ケトジェニックダイエット」とも呼ばれています。
1日の糖質摂取量を30から50グラムまで抑える厳しい糖質制限によって、体脂肪を燃焼しやすい体質に変えていくというメカニズムです。
2.糖質を緩やかに制限して血糖値の乱高下を防ぐ方法
人は、血糖値が急激に上昇すると「インスリン」という物質を大量に分泌して血糖値を下げようとします。しかし、インスリンには血中の糖分を脂肪として溜め込む作用がありますので、血糖値が下がる過程で脂肪蓄積が進みやすくなってしまいます。
お米やパンなどの主食には糖質が多く含まれているため、過剰に摂取すると血糖値はグンと上昇、そして下降し、脂肪蓄積につながります。緩やかな糖質制限をすることで、血糖値の急激な上昇や下降を防ぐことができ、脂肪を蓄積させないようにするメカニズムでダイエット効果をねらいます。
この場合は1日に摂取する糖質量を70から130グラム程度に抑えます。コンビニのおにぎりの糖質量はおよそ40グラム程度ですので、やりやすい方法といえるでしょう。
――糖質制限ダイエットには2つのパターンがあるのですね。人によって向き不向きはあるのでしょうか。
厳しい糖質制限は、内臓脂肪が多い人が痩せやすい方法です。お腹周りが気になる男性などにはおすすめですね。それほど太っていない人は、劇的な効果が出ない可能性があります。
緩やかな糖質制限は、一般的に多くの人におすすめできます。お菓子や間食がやめられなかったり、お米やパスタが好きだったりと、食の好みや習慣がありますよね。糖質を制限されることが強いストレスになるのであれば、緩やかな糖質制限を選ぶとよいと思います。
――糖質制限ダイエットではどんな食品を制限するのでしょうか?
白砂糖や白米、うどんなどの精製された白い食品は血糖値を上げやすいため控えましょう。野菜でもイモ類はできるだけ避けてほしい食品です。にんじんやトマトなども糖質量が多い野菜ですが、緩やかな糖質制限の場合は、そこまで厳密に制限する必要はないと思います。
血糖値の急上昇を防ぎたい場合は、代替として、甘いものならはちみつ、白米の代わりに雑穀米や胚芽米、麺類なら蕎麦やパスタを選ぶといいでしょう。
――糖質制限ダイエットは、どのくらいの期間続けると効果を得られるのでしょうか?
人によって差がありますが、糖質を減らすと2、3日で割とすぐ体重が落ちます。ただし、最初に落ちるのは水分です。そもそも糖質は、その質量の3、4倍の水分を蓄えた物質です。それらを食べないことで体内の水分量が減り、体重も減少するというわけです。
体脂肪が減るスピードについては、個人差はありますが、早ければ翌日には成果が出始めます。結果が出にくい方でも、1~2週間継続すれば、体脂肪率が目に見えて減っていくのを実感できると思います。
運動量や代謝の良し悪しにもよりますが、あまりにも結果が出ない場合はやり方が間違っている可能性もあるので、一度詳しい人に相談するのがおすすめです。
糖質制限ダイエットのメリットとデメリット
――糖質制限ダイエットにはどんなメリットがありますか?
糖質制限ダイエットのメリットは次の3つです。
■ 体重が落ちやすい
糖質制限ダイエットは他のダイエットに比べて体重が落ちやすいのが特徴です。
糖質制限を始めて2、3日でほとんどの人は体重の減少を実感します。前述のとおり、その一部は水分が減っただけなのですが、ダイエットで最も大切なのはモチベーション。糖質制限を開始して数日で体重が減少するという成果が見えることで、ダイエットを楽しく続けることができます。
■ 空腹感を感じにくい
食事のカロリーを制限する場合、食事量がグンと減ってしまい満足感を得にくいという側面があります。
一方で糖質制限ダイエットの場合は、お米や麺類など食べ過ぎてはいけないものはあるものの、食べてもいいものならあまり量を気にしなくてもスムーズに減量を進められることが多いです。
もちろん消費する以上に食べてしまうと痩せにくくなりますが、糖質制限の場合はご飯ものや衣のついた揚げ物、スイーツなど、高カロリーな食品は控えるため、自然と摂取カロリーが少なくなる傾向にあるからです。実際に糖質制限ダイエットをしている人からは「我慢せずにたくさん食べてるのに痩せられる」という声が聞こえてきます。
また、空腹感を感じにくくなる理由には、血糖値も関係しています。血糖値が急下降すると空腹感が発生するのですが、糖質制限をしていると血糖値の乱高下を防ぐため、空腹感を得にくくなるのです。
■ 病気の予防につながる
糖質制限によって、身体の「糖化」を防ぐことにもつながります。
糖化とは、糖質を摂り過ぎることで体内の糖とタンパク質が反応し、焦げつく現象。血管で糖化が起こると動脈硬化の原因になったり、肌で起きればシミやしわの原因になります。また、アルツハイマーの一因とも言われています。そうした病気の予防にもなります。
――たくさんのメリットがありますね。糖質制限によるデメリットはありますか?
デメリットも大きく3つあります。
■ 筋肉も落ちやすい
何のダイエットでもそうですが、やり方を間違えると脂肪だけでなく筋肉も落ちてしまいます。糖質制限ダイエットの場合は特に、糖質からエネルギーを作れなくなるため、筋肉を分解することでエネルギーを生み出そうとします。そのため、より筋肉が減りやすくなってしまいます。
筋力低下を防ぐためにも、糖質を制限しながらタンパク質はしっかりと摂り、筋トレをする必要があります。
■ 食費が高くなる
米やパンなどの主食は比較的に安価でお腹が満たせますが、それが食べられなくなってしまうわけですので食費が高くなる人が多いですね。デメリットと言えると思います。
■ 継続しにくい
糖質制限ダイエットはダイエット方法が合っている人にとっては長く続けられる方法ですが、実はなかなか長い期間続けられない人が多いダイエットです。ライフスタイルや食の好みに合わないと続けるのが難しい方法です。
糖質制限ダイエットをするときの注意してほしい3つのこと
――糖質制限ダイエットを効果的にやるには、どんなところに注意するといいでしょうか?
糖質制限ダイエットを始めようとしている人は、次の3つを気を付けてほしいと思います。
■ 糖質を制限しすぎない
まずは、糖質を減らし過ぎないように気を付けましょう。糖質制限を厳格にやろうとして糖質を摂らなすぎると、体調不良を引き起こしてしまいます。食事のバランスが悪く、栄養がかたよる人も多い印象です。いろいろな食品からビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を摂るように心がけましょう。
■ 代謝を落とさないように筋トレする
食事制限だけではなく筋トレを取り入れましょう。筋トレせずに食事量だけを減らすと筋肉が落ちてしまい、基礎代謝が落ちる原因になります。
実は、ダイエット中に筋肉を落とさずに体脂肪だけを減らそうとするのはかなり難しく、多少は筋肉も落ちるものです。落ちてしまった筋肉は、筋トレをしてタンパク質をしっかりと摂り、増やしていく必要があるのです。
■ 専門的な知識を持つトレーナーや栄養士に相談する
持病がある人やすでに痩せている人は、糖質制限が向いていなかったり、しない方がいい人もいます。まずはトレーナーや栄養士などの専門家に相談してから始めましょう。
厳密な糖質制限よりも糖質の摂取量を意識しよう
――これから糖質制限ダイエットを始めようとしている人に、アドバイスをお願いします。
人によって摂取するべきカロリーや糖質量は異なるため、できれば最初はプロや専門的な知識を持つ人に相談してほしいと思います。まずは専門家の人に計算してもらってから始めるのがおすすめです。
また、糖質を摂取するタイミングをコントロールすることも効果的です。たとえば、朝と昼は食べるけれど夜は食べないなど。そうしたことはぜひ相談してほしいと思います。個人個人に合ったスタイルを見つけて、継続して取り組みましょう。
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→無理なく続けられる「食事管理ダイエット」栄養士がLINEでサポート
「お酒もスイーツも大好き。でも痩せたい」。そんな相反する欲望を抱いている人は少なくないでしょう。管理栄養士の辻元未奈美さんも、クレープが大好き。それでも体型をキープできている秘密は、効果的な食事管理にあります。「その日に食べた食事の画像をLINEで送る」という食事管理法をアドバイスして「食事で痩せる」ダイエットをサポートしている辻元さん。我慢せず、無理なく続けられる食事管理ダイエットのコツはどこにあるのでしょうか?