「社内シスアド」という報われない仕事 ヒマに見えても「給料泥棒」じゃないぞ!
夏本番になりました。きっと大学3年生のみなさんは、夏休みを利用して企業説明会などに足を運んでいるのではないでしょうか? ブラック企業に嫌気が差してボーナスや有休もらって辞めた社会人さんも、転職活動に必死のころと思います。
というわけで、今月からしばらく「PCサポーターというお仕事の内容」についてお話したいと思います。一口にPCサポーターと言っても、いろいろな仕事があるのですよ。今回は「社内シスアド(システムアドミニストレーター)」についてです。(文:光明隠歌)
走り回らなくてもすむよう準備・監視する任務
PCサポーターを「パソコンに関するトラブルや設定などの一切合財を担当する業務」と定義すると、その範囲は多岐にわたります。一般的には「PCコールセンター」「訪問設定保守員」あたりが浮かぶでしょうが、大きな会社ですと「社内シスアド」「社内PCサポート」あたりの名称で、会社内のパソコントラブルを解決する部署が存在したりします。
この社内シスアドが結構クセモノでして、「パソコンやインターネットなどのトラブルがあった時に対応したり、新入社員が来た時にアカウントを発行したりする」程度の仕事もあれば、「メールとWebサーバの管理・監視業務」や「データベースサーバのバックアップ・管理業務」まで含まれるケースもあります。
社内シスアドの場合、普段は何らかのトラブルの兆候がないか、大きなトラブルになってしまう前に対応すべくシステムの監視をしています。ところがその状態は、業務を知らない人から見ると「ヒマ人」「遊んでる」と思われがちなのです。
本当は社内シスアドが暇であれば暇であるほど、システムも良好でトラブルもなく業務が進んでいる証拠です。社内シスアドが(新入社員時の設定など、一部例外を除いて)忙しくあちこち問い合わせたり走り回っていたりしている時というのは、会社のシステムに一大事が起きたりしているという、あまりよろしくない状態の時なのです。
むしろ社内シスアドが走り回らなくて済むようなシステム構築をすべく、システム移行時や新規導入時に、社内外問わずシステムエンジニアさんやプログラマさん、営業さんなどと綿密な打ち合わせをするのが仕事なのです。
「経費削減」すると万一の際のリスクが高まる
ところが、この社内シスアド、暇な時はとことん暇であるという点だけを見て「給料泥棒」「会社の利益に貢献していない」と考える人がいるのです。これを平社員が思ってるだけならともかく、専務や社長といった偉い人や、人事部などといった異動権限のある人がそう思ってしまうと、なかなか厄介なことになります。
どうするかというと、派遣社員や契約社員、パートタイマーのような安い賃金のものにこういった業務を割り当てさせれば、経費削減になると考えてしまうのです。
確かに、何もなければ暇な業務に見えるでしょう。しかし、だからといって非正規雇用の人たちにこの仕事を割り当てたら、どうなるでしょうか。忙しい時にも給料は低く抑えられたまま(ヘタするとサービス残業扱いで)、システムのトラブル対応や監視という名のお守りをさせられることになります。
賃金が低いのに、業務量は膨大に膨れ上がり、しかも責任は重大である――。こういう状態が続くと、人はどうなるでしょうか。その一つの結果が、某企業の顧客情報流出事件の引き金になったのではないかと私は考えております。
もう少し正しい認識が浸透しないものか
もちろん、すべての企業の社内シスアド職がこんなブラックかというと、そんなことはないです。正当なる職務と扱いを受けている企業も見ております。しかし、「ヒマに見える」→「仕事がない」→「経費の無駄だから削ってしまえ!」と短絡的な判断の結果、あとで泣きを見た企業が、企業規模関係なくあとを絶たないのも事実です。
ひどい例では、ぜんぜん違う業務の人間に「お前パソコン詳しかっただろ」の一言で社内シスアド状態にさせる(追加の職務手当などは一切なし)というケースもよく聞く話です。もう少し、
「何事も起こらないように監視し、なにか起きた時にすぐに対応するエキスパート=社内シスアド」
という考え方が浸透しないかなあ、と思う今日このごろなのです。
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