金の卵を産むニワトリは手放さない! 横暴オーナーの「従業員を辞めさせない」手口集
オーナー社長にとって、仕事を丸投げしておけば低賃金で利益を上げ続ける従業員は、まさに「金の卵を産むニワトリ」だ。辞めてしまえば儲けはなくなってしまうので、脅しくらいで退職を思いとどまるのであれば安いものである。
NPO法人労働相談センターが運営するレイバーネットには、横暴なオーナー社長の下で働く人たちから寄せられた「会社を辞めたいのに辞めさせてくれない」という相談メールの概要が掲載されている。2015年4月から7月までの相談のうち、掲載された56件からどのようなケースが多いのか見てみたい。
「会社の言い値で賠償金」の誓約書にサイン
まず目に付くのは、社長が理不尽な要求を突きつけてくるパターンだ。ある男性が退職した元同僚と飲みに行ったところ、翌日社長に呼び出されという。
「辞めた人間と会うような奴は信用できない」
そう叱責されたので、退職を申し出ると「そんなことを言う奴はさらに信用できない。辞めさせない。損賠訴訟を起こすぞ」と脅してきたという。
この男性は「辞めて会社に損害を与えたら、会社の言い値で賠償金を支払う」との誓約書にサインをさせられたとして「支払わなければ辞められないのか」と悩んでいるが、こんな不当な内容なら仮にサインしたとしても無効だ。
入社時の契約とシフトなどが大幅に違ったために退職しようとした人は、「契約社員の場合、契約期間満了でないと辞められない」と言われた。そこで期間満了まで待って退職しようとしたところ「すでに契約は自動更新されているから退職はできない」と勝手に引き伸ばされてしまったという。
このほか、ワンマン社長からの怒りや罵声で「死にたくなる」「ストレスで胃腸炎とうつ病になった」という人たちも。辞めることを「怖くて切り出せない」人や、「辞表届も突き返される」と語る人もいた。内容証明郵便で送っておくとよいのではないか。
「留学を言い訳にしているだけ」とバイト辞めさせず
社会問題にもなっている「ブラックバイト」の相談も少なくない。高校3年生の女子生徒は「進路もあり、バイトを辞めたい」と伝えたところ、
「オーナーから罵詈雑言で『進路なんかどうでもいい。バイトを続けろ』と言われ、『家まで怒鳴り込んでやる』と脅しまがいのことも言われた」
という。朝10時から夜10時まで長時間労働をさせられるので辞めたいが、「人手が足りない」と言って辞めさせてくれないと悩む大学生もいた。飲食店でアルバイトしている大学2年生は、海外留学が決まったため店長に退職を告げたところ、
「君は今のバイトから逃げたくて、留学を言い訳にしているだけだ」
と返答され、取り合ってくれないと明かす。余計なお世話と言うしかない。
相談に職業が記載されている人を見てみると、専門的なスキルが必要な職場が目に付く。代わりの人材が見つかりにくいので辞めさせてもらえないのだろうか。あるパティシエ見習いは、「一日最低でも15時間労働で月400時間以上働いている。休憩時間は5分」と超長時間労働の実態を語る。
賃金も極端に低く、仕事のストレスで自分を殴ってしまうこともあり「もう限界です」と話している。女子小学生の憧れの職場第1位の夢を壊さないでもらいたいものだ。
「家族を路頭に迷わせる訳にはいかない」と院長
個人病院に勤務する女性は、3年前から何度も「辞めさせて欲しい」と頼んでいるが、院長から「代わりの人がいない。社会人としてのルールがあるだろう。引継ぎもある。自分の家族を路頭に迷わせる訳にはいかない」と退職を認めてくれない。院長は自分の利益しか考えておらず、身勝手すぎるのではないだろうか。
ある美容師は、オーナーに「お客が入らない時間は給料をカットする」と言われ、手取りが10万円以下になってしまので辞めようとしたところ、
「辞めたいと言うのは、社会人をやめたいと言っているのと同じだ。認めない」
と言われて退職できていない。半年毎の契約で看護師として働いている人は、持病が悪化したため退職願いを出したところ、「契約期間があるから認められない」「退職は半年前届が決まり」「あなたの思い通りにはならない」と言われたと相談している。
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