売り上げシェア1位で満足しない! コンクール決勝をねらうヤマハのチャレンジャー精神

全国の学校にピアノをはじめとする楽器教材を普及させ、教室を展開して音楽文化を日本中に育ててきたヤマハ(静岡・浜松)。9月3日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、更なる高みを目指した「一流のプロに選ばれるピアノづくり」への挑戦に密着していた。

楽器メーカーは通常ほぼ1種類しか扱わないが、ヤマハは何でも作る。創業は文明開化期の1887年。創業者の山葉寅楠が米製オルガンの修理を行ったことをきっかけに、ピアノ、ハーモニカ、リコーダーなどを学校に製造販売。世界でも例のない「総合楽器メーカー」となっている。

36人中26人がスタインウェイを選んだが

ヤマハのウェブサイトより

ヤマハのウェブサイトより

今年4月、中田社長は社員たちに次のようにビジョンを語った。

「ヤマハは規模的には世界一の楽器メーカーと言われるが、総合優勝。個人戦では金メダルを取り切れていない。それぞれのカテゴリーで金メダルを取りに行きましょう」

世界一を目指したのは、金額ベースでは世界シェアナンバーワンのピアノ。しかしプロが使う最高機種において、実はヤマハはトップブランドではない。世界のトッププロに選ばれるピアノとなることが、ヤマハの金メダルなのだ。

挑戦の舞台は、ロシアで4年に1度開かれる「チャイコフスキー国際コンクール」。世界最高峰の出場者が集まる最も権威あるコンクールだ。公式ピアノメーカーは、イタリアのファツィオリとアメリカのスタインウェイ、そして日本のヤマハと河合楽器の4社だ。

ライバルはアメリカで150年以上の歴史を持つ最高級ピアノの代名詞「スタインウェイ&サンズ」。これまで多くの出場者たちが選んできた絶対王者だ。より多くの出場者にヤマハを選んでもらい、スタインウェイの牙城を崩すのがヤマハの悲願だ。

出場者が会場に並べた4台を実際に弾き比べ、本番で弾くピアノを選んでいく。ほとんどの出場者が真っ先にスタインウェイを弾きに行き、結局は36人中26人がスタインウェイ、ヤマハを選んだのは4人にとどまった。

慣れを超えた「圧倒的な差」を目指す

しかしコンテスト本選が始まると、ヤマハを選んだ4人中3人が決勝まで勝ち残った。決勝当日には中田社長も演奏を聴きに訪れ、1700の客席を埋め尽くした会場で、最後の演奏が始まった。

2回戦までヤマハのピアノで弾いたロシアのセルゲイ・レーディンキンさんは、残念ながら決勝ではスタンウェイに変えていた。決勝を争った6人全員がスタインウェイ。セルゲイさんの結果は第3位だった。

村上龍が「ライバルとの差」を中田社長に問うと、過去2回、チャイコフスキー国際コンクールでヤマハのピアノを選んだ出場者が優勝を果たしていることを挙げ、「それ程の差はない」とした上で「歴史の厚み」と「慣れ」が大きいことを話した。

現在どこの会場に行ってもスタインウェイが設置されており、ピアニストはそれに慣れている。最後の曲ではリスクを取りたくなかったのだろう。それが負け惜しみのように聞こえないのは、「それを押してでも弾きたくなるくらい、圧倒的な差をつける必要がある」と謙虚に目標を語っていたからだ。

モノづくりの目標を「フェラーリ」に例える社長

村上がさらに「シェアナンバー1だけで十分という考え方もあるが?」と尋ねたが、「音楽は必需品ではない。皆が憧れるものを作って初めて『使いたい』となる。だから真剣勝負で腕を磨き合うところに参加するのは非常に大事だと思います」と高い目標を掲げた。

「車で行ったらフェラーリ。すごい車を作っているが商売としては世界一ではない。でも誰もが憧れる。そういうものを作りたい。挑戦は続けます」

村上龍が編集後記で「市場の成熟後に高付加価値を追求する、優良企業だけに許される挑戦である」とまとめたように、総合優勝では満足せずに人々が憧れる最高品質をめざすメーカーとして向上心が素晴らしい。また、村上龍が大企業ではなく「優良企業」としたことで、ヤマハの心意気を尊敬する気持ちが窺えた。(ライター:okei)

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