新型コロナウイルスの感染拡大も一段落し、各地では混雑も復活した。とりわけ大都市圏では、再び外国人観光客を多く見かけるようになった。ところが東京湾岸のタワマンエリアでも、外国人観光客による混雑に悩まされているという。湾岸は有明のタワマンに暮らす50代男性は「毎日、帰宅までの道のりにうんざりしている」とぼやく。いったい、どんな状況が生まれているのか。(取材・文:昼間たかし)
21時台のバスは3本
男性が有明のタワマンを購入したのは、13年前のことだ。
「当時は、店舗も少なくまさに陸の孤島という雰囲気でした」
そんな有明にも2020年には大型モール「有明ガーデン」がオープン。次第に住みやすいエリアに変貌しつつはある。
「とはいえ、交通機関が充実しておらず、出かけるのに一苦労という点ではまったく変化がありません」
男性の暮らすタワマンから最寄りの交通機関は、ゆりかもめと都営バス。それに東京都心〜臨海副都心間を走るバス、東京BRTの3つがある。
「ゆりかもめは、豊洲か新橋。BRTは新橋行きです。勤務先は東銀座なので必然的に東京駅行きの都営バスに乗ることになります」
いつも利用している都営バスは東京駅丸の内南口〜東京ビッグサイト間を走る「都05-2」系統。職場のある東銀座に近い停留所は築地だ。男性が苦痛だと語る夕方の時間帯は18時台に6本が運行されており、けっして不便ではなさそうに見える。
「19時台まではまだ、1時間に6本バスが来ますが、それ以降は最寄りのバス停に停車するバス20時台は4本、21時台は3本とかなり減ります。途中の勝どき・晴海で降りる乗客も乗ってきますから、バスはひどく混雑します。正直、勝どき・晴海の住人には有明方面のバスに乗るのをやめて欲しいです」
そんな男性をさらにうんざりさせているのが、最近の外国人観光客の増加である。
「コロナ禍を挟んで有明周辺にもホテルが増加しました。それらに宿泊している外国人観光客のせいで、いっそうバスが混雑するようになっているんです」
夏頃から完全にキャパオーバーになっているバス
とりわけ、外国人観光客が増えた夏頃から男性は今までにあり得なかった事態に遭遇しているという。
「ようやくバスが来たと思ったら、停車したバスが『満員ですので、次のバスをご利用下さい』とアナウンスして去っていったことが2度あります。コロナの最中ですら、どんなに混雑していても詰め込んでくれたんですけど、完全にキャパオーバーになっているようです」
有明のタワマンを購入した理由は、ほどよい郊外の雰囲気と、バス1本で銀座に出かけることができる利便性だったという男性。しかし、帰り道のことを考えて休日に銀座に出かけることはなくなったという。
「生活がほぼ(会社最寄りの)晴海通りと、有明の島の中だけで完結しています。この広い東京に住みながら、めちゃくちゃ狭い世界で生きていると考えると愕然としますね」
ちなみに、東京駅から有明までを繋ぐ地下鉄が2040年までに開業する方針だと東京都は発表した。そのことを男性に尋ねてみると……。
「そんな年齢まで、ここで暮らしたいとは思いませんよ。もう、今すぐにでもバス通勤をやめたいです」
ちなみに湾岸エリアではコロナ禍以降、シェアサイクルが便利な通勤手段として注目されているが、男性は首を横に振る。
「晴海大橋を歩いたことがありますか?電動アシストつきでも、あの急勾配を毎日自転車で往復するのはしんどいですよ」
ちなみにコロナ禍では、テレワークになりバスの苦痛から解放されていたという男性。現在も勤務先では必死にテレワークの継続を主張しているという。