「夢追い男子」をヒモに育成する実録マンガ「ヒモザイル」休載へ 「他人の人生切り売り」が反感買ったか
人気漫画家の東村アキコさんが講談社の『月刊モーニング・ツー』で連載していた「ヒモザイル」が休載することになったと、10月21日にモーニング編集部が発表した。休載理由は、作品に対してSNSなどでさまざまな反応があったため、東村さんから「しばらく時間をかけて内容を吟味し、発表できるかたちになってから再開したい」との申し入れがあったためだという。再開時期は記されていない。
東村さんといえば、三大出版社でそれぞれ連載を抱え、「主に泣いてます」がドラマ化、「海月姫」が実写映画化されるなどの売れっ子漫画家。根強いファンも多いが、いったい何が問題だったのだろうか。
34歳男性アシスタントを「ヒモザイル」1期生として教育
今回問題になった「ヒモザイル」は、東村さんがアシスタントの男性たちを独身キャリア女性のヒモに育てあげるというドキュメンタリータッチのストーリーだ。
第1話は、ママ友が東村さんの仕事場を訪れるところから始まる。ママ友は東村さんの仕事を補佐するアシスタント男性たちに子どもを預かってもらい東村さんとお茶に行くのだが、子どもを連れた帰り道、「(アシスタントたちは漫画家として)見込みあるの?」「だってもういい年じゃない」と質問。東村さんが返事を濁すと、
「うちの子があんな風になったらどうしよう…」
と発言する。今までアシスタントの将来を考えたことがなかったという東村さんはこの発言に衝撃を受ける。その後、独身キャリア女性の友人たちと飲みに行く機会が訪れるが、そこで、彼女たちが「家事できる男じゃないとムリ」「イクメンいいよね」と言うのを耳にする。
そのとき、東村さんの頭の中で、「アラサ―の働く独身女子」と「アシスタント夢追い男子」の需要と供給が一致するのではとの考えが閃く。そこで、アシスタントをヒモとなるべく教育し、オーナーになってくれる女性にアタックをかけるという「ヒモザイルプロジェクト」を立ち上げるのだ。
第2話では、プロジェクトが開始され、アシスタントの34歳男性がヒモザイル1期生として指名される。東村さんからプライベートに突っ込みを入れられ、どうすればオーナーが見つかるかと考えていくという内容だった。
自分以外の登場人物全員を「見下していて気分が悪い」
誌面掲載時には特に問題はなかったようだが、Webコミックサイト「モアイ」で無料公開されると、「アシスタントをバカにしている」などと批判が続出。「ヒモザイル計画は普通にパワハラ案件」という声が噴出した。
「女友達もアシスタントもママ友も、自分以外は見下してるのがにじみ出ていて気分が悪くなる」
アシスタントの将来を案じるのは結構だが、本人が乗り気でないのにも関わらず、ヒモに仕立てあげて、その様子を漫画にするのは傲慢、というのだ。しかも、アシスタントは漫画家である東村さんよりも明らかに立場が弱い。これまで漫画の中で自分を面白おかしくネタにしてきた東村さんが、ついに「他人の人生を切り売りするようになった」という指摘もある。
また、ヒモザイルはキャリア女性から経済的に支えてもらいながらも、家では家事や育児を全面的にサポートする実質的な「専業主夫」だ。そのため、「専業主夫とヒモは違うんじゃない?専業主婦を寄生虫って言うのと同じじゃん」という見方も寄せられていた。こうした反応が休載の決定打となったようだ。
東村アキコ「嫌な気持ちになった方には本当に申し訳ないと思ってます」
一方で休載が報じられるとファンからは「わーマジで意味がわからない…ヒモザイル楽しみにしてたんだけどなあ…」という声も出た。プロジェクトに関しても、「暴力的な部分はあれど、愛は感じられた」「ヲタ男子はああでもしないと(結婚相手として)普通枠にすら入らんぞ」と好意的な見方もあった。
今回の件について、東村さんは、
「嫌な気持ちになった方には本当に申し訳ないと思ってます。そして、連載を楽しみにしてくださっている方々、本当にごめんなさい」
とモーニングの公式ページとツイッターでコメントしている。
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