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「私はモノではないし、ゴミでもない!」 ブラック企業を訴える若者たちの反撃

企業の不当な扱いに対して、今までは「非正規雇用だから」「自分が悪い」と諦めていた若者が、自ら声をあげ始めた。

2014年9月23日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、勤めていた会社を相手取り訴訟を起こした若い女性や、最低賃金未満で働かされていた青年が労働条件の改善に成功した事例などを紹介。「もう泣き寝入りしない」と決意し、動き出した若者たちの戦いを追っていた。

会社のご都合主義「これは労働ではない。残業代の考え捨てて」

「私はモノではないし、ゴミでもない。ちゃんと人間扱いをしてほしい」

今年8月、記者会見でそう訴えたのは、勤務していた会社をブラック企業として告発した木村美雪さん(仮名・24歳)だ。彼女は裁判を起こした理由を涙ぐみながらこう語った。

「未払い賃金や残業代、精神的侵害のお金を支払ってもらうだけが裁判の目的ではない。会社に奪われた自信と自尊心を取り戻して、前向きに進んで行きたいという思いから、裁判をすることを決意しました。ただの被害者で終わらせず、大きな声を上げて社会を変えていきたいです」

昨年11月、木村さんは厚生労働省が「若者応援企業」として認定するIT企業の求人に応募し研修を受けた。1か月の研修期間で会社の理念やITの専門知識を学んだが、その際に渡された100ページほどの「研修マニュアル」を見て驚愕したという。

「ルールは会社側にある」「3年間は絶対続ける、絶対辞めない」「無駄な事は考えずにただ、ひたすら頑張ってください」などと書かれているなかで、木村さんがもっとも驚いたのは「勤務観と労働観」の項目だった。

「我々は、普段、労働をしているわけではなく『勤労』をしています。労働とは苦役の事で、ほんらい奴隷が行う仕事です。お金のため、食べて行くために苦しみながら身体を労し働く事です。一方勤労とは働く事を通して、心身を磨き、自分を成長させることです」

労働の対価を支払うべき会社が「お金のため、食べて行くために働くのではない」というのは都合が良すぎる話だ。実際、その会社からは「(これは労働ではなく)勤労なので時間は関係ない。残業代という考えも捨ててください」と言われたそうだ。

月270時間働いた研修は「報酬ゼロ」

0925tv研修中の給与はなしで、休みは1日のみ。月に270時間働いた。それでも12月に正社員として入社し、最初の3か月は試用期間で、朝は8時50分に出社し、退社は夜11時30分。月に228時間以上働いたが、給与は残業代込みで18万円だった。

木村さんは「食らいつかなきゃと必死だった」と当時を振り返る。だが2週間後に倒れ、それでも2か月間は働いたものの、ついにドクターストップ。「適応障害」という診断が下され、休職を余儀なくされた。

彼女が助けを求めたのは、「ブラック企業被害対策弁護団」。労働問題のエキスパートである佐々木亮弁護士を中心に200人以上の有志の弁護士が集まり、問題企業と闘う若者たちをサポートしている。

相談後、「研修中の給与と残業代未払いの請求、・労務管理の問題」を弁護士と共に交渉する旨の通知書を会社側に送ったが、回答は、すべてに「払う義務はない」というものだった。

さらに会社は、8月に休職期間が満了したとして「離職票」を送りつけてきた。「自然退職」という形で解雇されたのだ。木村さんと佐々木弁護士は裁判を起こすことを決意し、9月30日に第1回の裁判が行われる。

労組と共に交渉。アルバイトの賃金が改善された

弱い立場の非正規雇用の若者からも、会社を訴える動きが出ている。「首都圏青年ユニオン」はパートやアルバイトでも1人で加入することができ、団体交渉を行うことができる。

8年半働いたアルバイト先の大手カフェチェーンを、不当に追われたという綾瀬エミさん(仮名・30歳)は、職場復帰を希望し会社と交渉を続けてきたが、裁判を起こすことを決断した。1年におよぶ会社との交渉で悟ったことを、こう語る。

「会社側は、私が裁判をすると思っていなかったし、アルバイトはどんなことをしても絶対自分たちに歯向かわない、都合の悪いことは起こらないと思っている。私が、何が嫌だったかを明らかにできるのは法廷しかない」

一方、交渉だけで改善した例もある。警備員のアルバイトをしている30歳の男性は、賃金が東京都の最低賃金を大きく下回っており、正当な賃金を要求すると、意外とあっさり日給が上がった。

「これ以上要求すればクビ」という揺さぶりがあったものの、さらに過去2年間の最低賃金との差額要求を団体交渉で臨んだところ、社長はまず団体であることに驚いた様子で、過去の差額分を支払うことに合意した。

警備会社の経営者は、心まではブラックになっておらず、「言われなければそのままで」と安直に考えている例だったのではないだろうか。

洗脳マニュアルのようなものまで作って、長時間労働やサービス残業に耐えさせようという企業は手強いが、訴えを起こしたことは多くの虐げられた人たちに勇気を与えた。何も言わなければ労働条件は悪いままだが、勇気を出して声を発していくことで変えられることもあると感じた。(ライター:okei)

あわせてよみたい:若者応援企業が「ホワイト」とは限らない理由

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