各地で廃線相次ぐ「路線バス」 乗客減少と運転手不足どう乗り切る
いま、多くの路線バスが赤字で危機を迎えている。乗客数の減少で売り上げが伸びず、運転手不足も深刻で年間1000キロ近い路線が廃線になっているという。そんな中、公共交通機関としての責務を守るために奮闘するバス会社もある。
2014年9月2日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、地道な努力で赤字路線の乗客を増やしたバス会社や、「高卒新卒採用」で運転手を育成して人材獲得を始めたバス会社を取材していた。
赤字の原因は「時間通りに来ない」ことだった!
埼玉県川越市の「イーグルバス」は、レトロな外観のボンネットバスで大人気だ。歴史的名所の多い川越の街で、運転手が観光案内をしながらバス路線を走らせている。
童謡「とおりゃんせ」発祥の地、川越城本丸跡地に差し掛かると運転手が歌を歌うサービスまで行っていたが、観光バスを兼ねられるような路線は限られている。
2005年、イーグルバスは廃線となった西武バス路線を引き継ぐことになる。社長の谷島賢さん(60)は、赤字路線を引き受けた理由をこう語る。
「隣の町で、交通空白地帯になってしまうという恐れがあったので、ビジネス面はさて置き、引き受けることにした」
谷島さんは赤字の理由を探るべく何度もバスに乗り、「地域的に利用者がいないのか、ニーズに合っていないのか」を調査。利用者にアンケートをとり、バスにモニターをつけるなど地道なリサーチの結果、「時間通りに来ない」ことがバス敬遠の最大の理由と判明した。
そこで会社は、ダイヤ改正を実施。1つひとつ数分の遅れさえあぶり出し、無理のない時間に組み直すなど遅延のない運行を実現した。団地の客には、きつい登り坂を登らずに済むよう団地前まで送り届けるサービスまで行っている。
コスト面より客の利便性を重視した改革で、利用者は以前に比べ25%上昇した。赤字が解消したわけではないが、今後も改革を行っていくという。
大型二種免許の取得者は40年で10分の1に
多くの乗客が利用するバスでも、運転手不足が深刻な問題だ。20代の若者で大型二種免許を取得している人は、40年前には9万5000人いたが、2013年では1万人まで減少した。
当然、全国的に運転手の奪い合いが起きており、「川崎鶴見臨港バス」経営管理部の高野沢さんは、運転手の厳しい人材不足についてこう話した。
「残業とか休日出勤をして対応しているのが現状です。(求人で)50~60人くらいは補充したいと思っている」
静岡県中部の「しずてつジャストライン」は、定年退職した運転手を嘱託で雇い、恒常的に足りないシフトの穴埋めをなんとかこなしているが、さらに高卒者を対象とした「養成バス運転士」という制度を設けた。
これは、入社後の数年は整備や事務などを担当させた後、大型二種の免許取得を会社がバックアップ、独自の運転指導も行い、運転手を育成するというもの。コストや時間は掛かるものの、毎年確実に運転手を増やせる見込みができる。
この制度を利用して運転士になった小柳巧巳さん(22)は「僕はバスがたまたま好きだったので、バスで地域貢献できればと」と語り、好きな仕事に就いて社会貢献できる誇りを感じているようだった。
運転手には重責に見合った適正な待遇を
地元の若者を育てることで人材確保するというこの制度は、実際に数年前から2~3人の運転手を生み出すことに成功している。今後は養成バス運転士の採用を、年間20人に拡大していく予定だ。
環境面からも求められる路線バスは、高齢化社会の移動手段として今後も重要になってくるだろう。安全を守りながら接客サービスも行うバスの運転手は、高度な技術を要する専門職だと感じた。人手不足できつい勤務状況になれば、安全が脅かされるのだから、その重責に見合った適正な待遇で働ける職業であってほしい。(ライター:okei)
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