「体育会系の男子歓迎」の時代は終わった? 女性やLGBT人材を積極採用する企業たち
新卒採用で歓迎される学生像といえば、上下関係に厳しく好戦的で体力のある体育会系の男子学生というイメージが根強くあった。しかし企業の課題が多様化し、売り手市場の人手不足も相まって、求められる人材は多様になりつつある。
3月1日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、同日に都内で開かれた合同就職説明会を取材。女性や性的マイノリティー(少数派)など、これまで主力と見られてこなかった人材に企業が注目している様子を伝えていた。
kmタクシーでは「若い女性のおかげで雰囲気がソフトに」
東京・中央区で開催された合同説明会「みん就フォーラム」には、44の企業と1500人の学生が集まっていた。2017年卒は、面接解禁が去年より2か月早まる短期決戦。ある採用担当者は「説明会の回数を増やしたりして(学生との)接触回数を増やしている」と話す。
タクシー大手の国際自動車(km)の説明ブースに集まった7人のうち4人が女子学生で、真剣なまなざしで説明を聞いていた。慢性的なドライバー不足に悩む業界にあって、kmは3年前から新卒の女性を採用し始め、女性比率を高めてきた。
昨年入社した108人のドライバーのうち、4人に1人は女性。西川洋志専務は「もっと女性の採用人数を増やしていきたい」と語り、会社にとってのこんなメリットも明かした。
「男性社会だったのが、女性が入ることで現場の雰囲気が変わってくる。若い女性が入ることで会話の内容も変わる。雰囲気がソフトになってくるんですね」
9割の営業所で女性専用の休憩スペースやシャワールーム、仮眠室などを整備し、女性が働きやすい環境を整えている。営業戦略の1つとして、女性ドライバー専用のタクシー「リラクシー」も導入した。2020年までに女性社員を1000人に増やす計画だという。
第一生命は「LGBT市場」に注目、人材採用を強化
第一生命保険は「市場としてのLGBT」に注目し、同性パートナーでも配偶者と同じように保険受取人として扱うサービスを開始した。LGBTとは、L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダーなど性的マイノリティのことだ。
多様化する市場のニーズに応え、サービス向上のため、同社ではLGBTの人材を積極的に採用するという。採用担当者は、理由をこう説明した。
「LGBTの方の本当の気持ち、本音を捉えきれていない。その方々が何を求めているのかに対して、正しいサービスが提供できる可能性が高まる」
LGBTの人にとって、就職したい企業がLGBTに理解があるかどうかは気になるところ。同じ日に開設されたLGBTのための就職口コミサイト「Job Rainbow」を見ると、企業や同僚によって大きな差があることが分かる。
「カミングアウトしたが対応が変わる面接官は一人もおらず、(採用)審査自体は厳格に行われた」
「同僚に関しては、あまりLGBTに理解はない。『ゲイなんて気持ち悪い』『性同一性障害とか無理』などと会話」
「そもそも存在しないものとして扱われているので、相談のしようもありませんでした」
無理な長時間労働や怒声によるパワハラを減らす効果も?
Job Rainbow代表の星賢人さんは、このサイトを立ち上げたねらいをこう語る。
「LGBTの就活者や求職者が自分らしく働ける職場に出会えるように、自ら確認してもらい、企業選びの軸にしていただきたいと思います」
個人的には「若い女性が入ると雰囲気が変わる」という言葉を聞くと、昔よく言われた「職場の花」という言葉を思い出す。しかしサービス業としての意識が高まったり、無理な長時間労働や怒声によるパワハラがしにくくなったりという効果が期待できるのも事実だろう。職場のマネジメントも、発想の転換が求められるはずだ。(ライター:okei)
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